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日本の「LJL」から韓国2部リーグへ…元RPGおよびDFM出身Dragonコーチインタビュー

プロゲーマーの追っかけ出身である女性ライターのスイニャンがeスポーツ観戦に関するさまざまな情報やコラムを不定期でお伝えします

 

2015年夏、日本のLeague of Legends(以下LoL)リーグ「LJL」に国際化の波が突如やってきたのを覚えていますか?

 

まだ、LJLがRiot Games公式大会では無かったころの話ですから覚えている人は少ないかもしれませんが、夏のシーズンが間もなく始まろうというタイミングで6チーム中3チームへ一斉に韓国人選手が加入したのです。その時、韓国人コーチまで引き連れて、前シーズン4位から一気に優勝チームへとのし上がったのが、Rampage(以下RPG)でした。

 

その韓国人コーチこそ、Dragonコーチだったのです。2016年のSpring SplitからはDetonatioN FocusMe(以下DFM)に移籍して2017年のSpring Splitまで活躍していたので、DFMのコーチというイメージのほうが強いかもしれません。しかし、2017年Summer Splitからは何と韓国の2部リーグ「Challengers Korea」のTeam Battle Comicsに移籍。2部といえど、世界トップクラスと名高い「LoL Champions Korea(LCK)」への唯一の登竜門となる非常にハイレベルなリーグです。着実にステップアップしているDragonコーチに、韓国で会ってお話を聞いてきました。

Team Battle Comicsってどんなチーム?

 

――まずは、どのようなきっかけでTeam Battle Comicsに加入したのか聞かせてもらえますか。

DFMを辞めたあと、今まで時間がなくてできなかったことをしながら休みたいと思って、1か月ぐらい映画を見たり本を読んだり友達に会ったりしながら過ごしました。そしてSummerシーズンが終わったら来年に向けてチームを探そうと思っていたところ、「今コーチを探しているチームがあるがやる気はあるか」という連絡を受けたんです。最初は「話ぐらいは聞いてみるか」というぐらいの気持ちだったんですが、とんとん拍子に話が進んで1週間も経たないうちに加入が決まりました。

 

――では、チームの紹介を簡単にしていただけますか。

僕たちTeam Battle Comicsは、韓国の2部リーグで2シーズン活動してきたチームです。現在は2部リーグにいますが、みんなで力を合わせて1部リーグ昇格を目標としています。監督1名、コーチ僕1名、そしてポジションごとに各1名ずつ選手が所属していて、合計7名のメンバーがゲーミングハウスで暮らしながら日々練習に励んでいます。

 

――チームの雰囲気や所属選手たちの様子はどうですか。

選手たちはみんな明るいですね。そして自分が上手くなるためには、何が何でも頑張るといった雰囲気です。自分たちにはまだ足りない部分があるから2部にいるんだという自覚をそれぞれが持っているので、学ぶ姿勢もできていて練習も本当に頑張っています。ほかの人たちよりもっと努力しようという姿勢が見えるので、コーチの立場としてはとても幸せですね。

 

――練習はどのように行っているのですか。

シーズン中は昼の12時に起きて食事をして、午後2時からスクリムですね。それが終わってから早めの夕食を取って、ソロランクを各自行います。午後7時ごろからスクリムをして10時ごろからはフィードバックですね。そして、夜間スクリムと称して午後11時から夜中の1時ぐらいまでまた練習します。その後は夜食を食べて寝る選手もいますが、シーズン中にはたいていソロランクをしてから明け方の5時ごろ寝ます。夜中はほかのチームもソロランクをしているので、選手たちはこの時間帯のソロランクが一番楽しいと言っていますね。

 

 

Dragonコーチはどうやって日本語を覚えたのか

 

――では、日本での生活を振り返ってみていかがですか。

僕は日本語もできるので、日本で過ごすのは楽でしたね。やりたいことも全部できるし、自由でした。食事も美味しくて日本に行ってから10キロも太ったんですよ。運動しなかったっていうのもあるんですけど(笑)。日本には甘いものとしょっぱいものが多くて合わない韓国人もいますが、僕はもともとしょっぱいものが好きなので合いましたね。

 

――Dragonコーチと言えばLJLのときから日本語がペラペラなことで有名でしたが、日本語の勉強を始めたきっかけって何だったんでしょうか。

実を言うと、日本語を勉強したことってないんですよ。僕の場合、すごく特別なケースだと思います。もともとゲームが趣味だったんですが、大学(CTU)に入ってからゲームを職業にする活動を始めたせいでゲームからストレスを受けるようになり、趣味がなくなってしまったんです。それでなにか新しい趣味はないかなと思っていたところ、アニメを勧められたんです。そこで初めて日本語に触れて、すごく楽しかったんですよね。

 

――お言葉ですが、日本のアニメが好きで日本語を勉強するというのはあまり珍しくないケースだと思いますが。

そこから本格的に日本語の勉強を始めた経緯がちょっと変わっているんです。LoLのソロランクで、Ceros選手やMeron選手などLJLの選手たちと出会ったんですよ。好奇心で声をかけたりしていたんですが、お互い英語があまり上手くないのでだんだんもどかしくなってきて。かといって彼らに韓国語を話せとは言えないので、僕が日本語を使わなければと思って自動翻訳を使うようになったんです。そこで出てきた単語をコピーして使っていたんですけど、韓国と日本の漢字が微妙に違うせいでLoLのクライアント上で文字化けしちゃうんですよね。それでローマ字を使うようになったんです。

 

――昔SNSで、Dragonさんがローマ字を使って日本語を書いていたのを思い出しました。でも、時間が経つにつれて漢字かな交じりで書けるようになっていきましたよね。

そうなんです。ローマ字で日本語を覚えたせいか、いつの間にか発音や聞き取りもできるようになっていて、たまたまソロランクで会ったMeron選手をスカイプに誘ったんです。今考えると恥ずかしいんですけど、かなり変な日本語を使って話していましたね(笑)。でも楽しかったので、日本語をもっと使いたいと思いました。SNSもローマ字でやっていたんですけど、日本の人にとってローマ字は読めるけどちょっと面倒くさいというか(笑)。それでローマ字をやめて「ひらがな・カタカナ」を使うようになりました。その後、日本で生活するようになってぐんと上達しましたね。日本で生活したのはやっぱり大きいと思います。

 

――とはいえ、日本で生活するだけではそんなに上手くなれないと思うのですが、何か秘訣があるんじゃないですか。

日本に初めて行ったとき、会う人ごとに「僕の日本語が間違っていたら指摘してくれ」って言って回ったんです。Tussle選手とDara選手もいっしょに日本へ行ったんですけど、彼らは今でこそ日本語も上達しましたが、当時はまったく喋りませんでした。「変なことを言って誤解を受けたくない、日本人の前で失礼なことをしたくない」という理由で黙ってしまうんですよね。でも僕は「失礼になっても構わない」ぐらいの勢いで話していました。「敬語はできない、語彙力も足りない、違っていたら教えてくれ」と先に断っておけば、たいていの日本人は理解してくれるんですよね。

 

 

日韓プロゲーミングチームの違いを語る

 

――Dragonコーチは日本と韓国両方のプロゲーミングチームを経験したわけですが、率直に何か違いはありますか。

日本のチームは自由ですよね。他人のプライバシーを尊重する感じで、生活するには良かったです。逆に韓国は、チームのためなら個人の生活を犠牲にする感じなんですよね。練習時間が体系的でみんなそれを必ず守らなければならない雰囲気があって、個人がチームに合わせる感じです。ただし、個人的には日本ではチームが「王者」の立場だったせいもあって、プレッシャーが大きくストレスもあったんですよ。だけどここでは「挑戦者」なので、みんなでひとつの目標に向かっていろいろ試しながら動いていて、むしろオープンマインドになりましたね。

 

――韓国は日本に比べると全体的にLoLの実力が高いですが、それはなぜだと感じますか。

韓国は、LoLのサービスが始まったころからコミュニティサイトで情報交換が盛んだったんですよ。特定チャンピオンの攻略法はもちろん、ワードの挿し方やテレポートのやり方、ジャングルの回り方などいろいろあって。そのうち大会の分析や、難易度の高い知識に関して討論もするようになったんです。だけど日本には、そういうサイトがないんですよね。だからソロランクを日本で回しても、みんな基本的な知識がないんです。ファームして集団戦して終わり、みたいな。日本と韓国ではプロ同士の知識にも差がありますが、正直言ってアマチュアからすでに差があると感じます。

 

――プロの話が出ましたが、日本のプロゲーミングチームに改善の余地があるとすればどんな点だと思いますか。

日本はチーム間での交流が少ないですね。韓国は同じリーグに参加しているチーム同士でスクリムをやったり、情報交換をしたり戦略について話し合ったりするんですよ。1、2時間意見交換をして、その後1対1で確認したりコーチ同士でも意見交換をしたりします。僕が日本にいたときに、「LJLはチーム同士での交流が少なすぎるのでは」って指摘した人がいたんですが、チーム関係者たちの反応はあまり良くなかったのを覚えています。広い目でみれば、リーグ全体の実力がアップするはずだと思うんですけどね。

「応援してくれるファンがいなかったらとっくに辞めていた」

 

――では少し話題を変えて、コーチという職業についてお伺いします。今は主にどんな業務をしていますか。日本との違いもあれば教えてください。

僕はスケジュールの組み立てや管理、試合のフィードバックやゲームの分析などをしています。うちのチームは監督がいますので、選手たちのいろいろなケアは監督がしてくれますね。さらに僕がどのように動けばいいか指示してくれたり、間違っていることがあれば教えてくれたりもします。僕の仕事自体は、LJLでやっていたこととほぼ同じですね。

 

――コーチとして選手たちと話すときに、何か気をつけていることはありますか。

日本にいたときは、いくら日本語ができるといっても僕はネイティブではないし日本人でもないので、日本の選手たちと感覚が少し違うところもあって話しづらい部分もあったんです。でも、韓国ではそういうことがなくて、楽ではありますね。気をつけていることは、選手たちを傷つけるような言葉は言わないようにしています。あとは、間違った情報も与えないように気をつけていますね。今は日本でコーチをしていたときより、選手たちとたくさん会話ができていると思います。

 

――Dragonコーチにとって、この仕事の楽しさと難しさは何でしょうか。

自分が教えたことによって、選手たちが成長していく姿を見るのが楽しいです。それからプレイは僕がするわけではないけれど準備はみんなでいっしょにするので、勝ったときの達成感があるのは良い点だと思います。難しいのは、「正解」がないことです。選手たちにも「正解」はあまりありませんが、例えばソロランクの点数など目に見える「指標」が少しはあるんですよね。僕らにはそういうことがまったくないですから。そして、「自分への評価を下すのは他人だ」っていうことも難しい点ですね。

 

――ではそろそろお時間となってきましたので、日本で応援してくれているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

日本に行ってRPGで良い成績を出し始めたころのことですが、ある配信コメントのひとことが2年経った今でも忘れられないんです。「Dragonコーチのような優秀な人が日本に来てくれてありがたい」という内容でした。そのほかにも、僕にはもったいないぐらいの声援をたくさんの方から送ってもらったと思います。応援してくれるファンの皆さんがいなかったら、とっくに辞めていたかもしれません。ファンの方からしたらたわいのないひと言だったのかもしれませんが、僕にとっては大きな力になりました。日本へ行ったことは本当に良い経験でしたし、コーチとして成長する基盤になったと思います。日本のファンの皆さんには本当に感謝しています。引き続き、LJLで活動する韓国人選手たちのことも温かく見守ってもらえたら嬉しいです。

 

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

日本にいたときは世界大会という大きな目標を持っていましたが、決勝戦のたびに2-3で負けて結局世界大会には行けなかったんです。徐々にリーグの実力も上がって辛くなってきたので目の前の1勝のほうが大切だと感じるようになったんですけど、韓国へ来てまた大きな目標ができました。これまでは漠然と「1部に上がりたい」と言い続けてきたんですが、入れ替え戦を観に行ったときに「1部じゃなくても良いからあのブースに入りたい」と思ったんです。ブースに入るには最低限入れ替え戦には出場しなければならないということになりますが、LCKのあのブースにみんなで入ることが今の個人的な目標ですね。

 

Dragonコーチツイッター

https://twitter.com/Dragon9560

 

Team Battle Comics

https://www.facebook.com/TeamBattlecomics/

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WRITTEN BY

スイニャン

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韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろからさまざまなWEBメディアで取材・執筆活動を行うほか、語学力を活かして韓国人プレイヤーのインタビュー通訳・翻訳や国際大会の日本代表団引率通訳などの活動も行っている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。