若者が熱狂できるeスポーツにもっと投資したい ビットキャッシュの代表が選手に懸ける可能性

なぞべーむ

最前線でeスポーツ事業に取り組む企業が1億円を超える赤字を出した――これだけ聞けば、多くの人がいまのeスポーツブームが虚ろで危ないものだと感じるだろう。しかし一方で、まだまだ市場を耕す段階だと思い至れば、この数字がただの赤字ではないことも察せられる。

eスポーツコネクトはまさに渦中の企業である。7月に、2018年3月期(第2期)において1億3400万円の最終損益を計上したことが報じられ、ちょっとした注目が集まった。同社は格闘ゲームや『Overwatch』を始め、多くのタイトルで国内トップクラスの実力を誇るCYCLOPS athlete gaming(CAG)を有し、対戦会などを開催できる施設としてOsaka esports basement.を運営している。

なにより、eスポーツコネクトはこのSHIBUYA GAMEを運営するビットキャッシュの関連会社であり、両社とも代表を伊草雅幸さんが務めている。では、伊草さんにとって昨期の赤字はどんな意味を持っているのだろうか。ファンや同業者、あるいは新規参入企業はこの数字をどう解釈すればいいのだろうか。

今回、編集部からそうした疑問をぶつける機会をいただいた。僕自身、伊草さんがどういう考えで多方面にeスポーツ事業を展開しているのか、その背景を知りたかった。話を聞いて分かったのは、ビジネスチャンスどうこうというよりも、伊草さんが誰よりも懸命に選手1人1人を気にかけ、成長をサポートしようとしている熱い志を持った人物だったということだ。

プレイヤーを知るところから始まった

――特に今年に入ってから、伊草さんが講演に登壇したり、ウェブメディアの記事に登場したりすることが増えてきたように感じています。これまであまりそうした露出はされてこなかったので、代表としては表に出ないのかなと思っていました。なので最初に、その変化にどういった背景があったのかをうかがいたいと思っています。

伊草 これまで表に出ないようにしていた、あるいは今後露出を増やそうとしている、といった変化があるわけではないんです。最近になって登壇などのお声がけをいただくことが増え、それにお応えさせていただいているだけなんですね。その背景としては昨今のeスポーツへの注目があり、その中で弊社がどういう取り組みをしているのか、オーナーはどんな人物なのかという点に興味を持たれるようになったことがあるのかなと思います。

ビットキャッシュのeスポーツ事業としては、2016年にeスポーツコネクトを設立し、同時にCAGを立ち上げました。そして2017年5月にはJCGを買収して、SHIBUYA GAMEをオープンさせました。さらに今年の4月には、社内でeスポーツ事業本部を独立させたんですね。ありがたいことに、こうした取り組みが広く認知されるようになってきたんでしょう。

――なるほど、御社グループへの注目が増していることの表れだったんですね。

伊草 以前からCAGの選手やゲーミングハウスが取材されることはあったんですが、そのオーナーへの興味はまた別ですよね。多くの企業がeスポーツに関心を寄せるようになったことで、すでに事業として取り組んでいる人物が何を考えているのかを知りたい方が増えたんだと思います。

――実際僕もそうですね。例えば、伊草さんがどれくらいゲームをプレイされているのかも気になります。

伊草 もちろんゲームは好きですね。ガチなゲーマーかというとそうではありませんが、ずっとテニスをやっていたにもかかわらず、もはや運動よりゲームをする時間のほうが多いです(笑)。

――eスポーツはどこが面白いと感じますか?

伊草 私のようなライトゲーマーでも大会を観戦して楽しめるのがいいですよね。会場で盛り上がるのも楽しいですし、ファンが歓声を上げていると私も手に力が入ります。特にCAGの選手が勝てば泣いてしまうこともあります。当然、負ければ本当に悔しくて、かなり落ち込みます。昔から勝負事が好きなので、ストレートに勝ち負けが決まるところがeスポーツの面白さだと思います。

――そんな伊草さんがeスポーツを事業にしようとしたのはなぜなんでしょうか。

伊草 私がいま会社を経営しているのは、「日本の若者を元気にする」という大きな目的を成し遂げるためなんです。そのためには若者が熱狂するコンテンツがとても重要で、ゲームは非常に有望な存在だと以前から考えていました。これほど若者が夢中になっているものはなかなかありません。「ゲームばかりしてはいけない」という親世代の声もありますが、もしいま以上に社会における理解が進めば、若者が心置きなく熱狂できるコンテンツになります。

3年前にeスポーツが盛り上がりつつあるとうかがい、事業として取り組んでみようと踏みきったのがCAGの設立でした。もちろん、最初から儲かるとは考えていませんでした。実績もないのに協賛していただけるはずもありません。ですが、選手に対しては給与を始め、ゲーミングハウスの運営など可能な限りの待遇をするよう努めました。

なぜそうしたのか。ビジネスとしての勝算だけを見れば、JCGのような利益を生んでいる企業を買収するところから始めることもできました。しかし、私が事業を行うそもそものテーマにもとづけば、ガチなゲーマーではない自分が最初に取り組むべきは、ゲーマーと直接コミュニケーションすることでした。彼らの心理や行動原理を知り、eスポーツが本当に日本の若者を熱狂させる存在になりうるのか、自分で確かめて実感するところから始めなければならなかったんです。それがチーム作りからスタートした理由です。

実際に触れ合うようになって、eスポーツは若者が熱狂できるものなんだと強く感じました。一方で、その熱狂の度合にもプレイヤーごとに温度差があることも分かりました。情熱が強い人のほうが勝敗にこだわり、負ければ反省して次に活かそうとします。まさにチーム名にある「athlete」なんですね。

ゲームへの情熱、勝負への本気度の違いは、プレイヤーと間近で接すれば接するほど感じざるをえません。eスポーツに100%打ち込もうという人は、実際にはまだ少ないんですね。学生で、大会よりも就活を優先する人もいます。当然、それを否定するわけではありません。ただ、社会での認知や理解、先生や保護者の後押しがあれば、eスポーツに全力で取り組んでみようという人も増えるのではないでしょうか。

eスポーツのビジネスチャンスはどこに?
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2016年から個人でesports業界向けのメディアとして「tokyo esports」を運営。業界分析やマーケティング手法、関係者インタビューなどをテーマに記事を書いている。esportsプレイ遍歴はまばらだが、大会はほとんどのタイトルを観戦。

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