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若者が熱狂できるeスポーツにもっと投資したい ビットキャッシュの代表が選手に懸ける可能性

eスポーツのビジネスチャンスはどこに?

――では、伊草さんはeスポーツのどういったところにビジネスチャンスを見出しているのでしょうか。

伊草 選手育成やチーム運営が直接的にビジネスとして儲かるとは捉えていません。現状の投資フェーズが終わったとしても同様ですね。しかし、チームが活躍することでeスポーツ業界が全体として盛り上がってくると、eスポーツは若者に刺さるコンテンツなんだといろんな企業や自治体が認識し始めると思います。

いまもその流れが加速していますが、そうなれば自然と人が集まる場が増えていきます。人が集まるところにはビジネスチャンスがあるんです。その場で何かを販売する、広告効果が期待できるなど、さまざま考えられますね。

――これまで取り組まれてきて、どれくらい可能性を感じていらっしゃいますか?

伊草 2年前だとJCGは子会社ではなかったですし、事業全体としてまだまだ投資だという意識が強かったです。しかし、JCGの買収や昨今の状況を加えると、中期的には確実な利益が見込めると考えています。現状も投資フェーズだという認識は変わりませんが、eスポーツコネクトにしろSHIBUYA GAMEにしろ、マネタイズのポイントは見えています。

eスポーツをスポーツビジネスと捉えることもできますが、プロ野球しかり、チーム運営だけがビジネスではありません。スポーツとして広く認知されているがゆえに、メディアやマーケティングなどの関連事業も行なわれていますよね。eスポーツも同じだと思います。弊社もそのために幅広く事業展開していると言えます。

――eスポーツの認知自体は拡大していますが、伊草さんがビジネスとしての可能性を外部の人に説明するときはどんなことをお話しされるんですか?

伊草 基本的にはいまお話ししたことを伝えています。テレビを観ない、執着心が小さい、自己主張もしない、そんな若者が増えている中で、なんとか若者の心を捉えようとしている企業はたくさんあります。そういう状況で、「若者が集まり熱狂するコンテンツがあります、それがeスポーツなんです」と言えば、たいてい興味を持ってくださいますね。

中高生は可処分所得はそれほどありませんが、早くから企業のファンになってもらうことは将来の顧客になってもらうことでもあります。ですので、顧客を育てるという観点でeスポーツに注目している企業が多いですね。弊社では、問い合わせをしていただいた皆さんの経営課題に対してeスポーツで何ができるのかをお伝えし、イベントなどをご提案するケースが増えています。

――eスポーツ事業を行なう企業、あるいはチームにしても、「eスポーツは儲からない」と強調することが多いです。それについてはどう思われますか?

伊草 はっきり断言される方もいますが、どういう視点から見るかだと思います。すでに儲かっているところに投資するのか、これから市場を作るために投資するのかでも違います。直接的な売上のために取り組むのか、あるいは販促やブランディングを目的にするのかでも違いますよね。

例えば、日清食品さんが積極的にシーンを支援してくれていますが、認知拡大の効果を狙う一方、熱狂している若者を応援するという気持ちも絶対にあると思うんです。だとすると、売上にすぐ影響はなくても、ブランディングとしては成功していますよね。

親が背中を押してくれる世の中にしたい

――少し話題を大きくしますが、伊草さんはeスポーツをどういうものにしていきたいとお考えですか?

伊草 いろんな方とも話す中で、やはり「eスポーツを文化にする」というのがキーワードになります。ただ、文化にすると言ってもどういうことなのかいまいち分かりませんよね。学校教育に取り入れられることを重要視する向きもありつつ、授業や部活で行なわれることで文化になったと言えるかというと微妙です。

むしろ、いまその風潮が高まってきているらしいんですが、クラスの中でゲームが強いと自慢になるそうなんです。足が早い、勉強ができる、そういった能力へのリスペクトと同じ対象にゲームがなりつつあるわけです。もちろん、だからといって親御さんが「ゲームをやりなさい」とはまだ言ってくれません。ゲーマーとして食べていく道が確立されていないからです。

そういう意味で、ゲームにのめり込んだとき、ゲーム会社に就職する以外のキャリアが見えている状態を作る必要があると思っています。CAGでも、選手が引退したあとのキャリアを準備しています。ストリーマーを始め、チームのコーチ、あるいはマネージャーや広報を担当するのはもちろん、JCGやeスポーツコネクトでイベントを企画・運営をする、SHIBUYA GAMEでライターや編集者になることもできます。

選手として活動することで社会で通用する能力が身につく、もしくはeスポーツ業界で仕事ができるようになる。こうしたことが弊社だけでなくほかのチームでも当たり前になると、先生や保護者も後押ししてくれる可能性が高まるはずです。

ほかの解釈もあると思いますが、私としてはそうなって初めて「文化になった」と言えると考えています。つまり、eスポーツが人生を形作っていくキャリアの中に位置づけられること、これが文化になるということです。

――所属している選手の親と話すこともあるんでしょうか。

伊草 あります。契約上、18歳未満だと保護者の許諾が必要になりますから。特に保護者が反対されている場合は説得しなければならず、根気よくお話ししなければなりません。例として、とある選手は高校で引きこもりになってしまってゲームに熱中していたんですが、親御さんはそのゲームこそが元凶だという捉え方をされていたんです。私は志も実力も備えていた彼に加入してほしかったので、直接会ってお話しするしかありませんでした。

話し合いは「お願いだから入団させないでほしい」という状況から始まりました。こちらとしては、世界そして日本でeスポーツがどれくらい成長していて、弊社がどんな取り組みをしていて、そしてチームの活動についても丁寧に何度もお伝えしたんですね。

結果としては納得していただけて、その後に選手もある大会で優勝してくれました。短いながらも新聞の全国紙にも載りましたしウェブ記事で取り上げられまして、親御さんからお礼の言葉をいただきました。お礼を言うのはこちらのほうなんですが、そういうふうに認めていただけるのは嬉しかったですね。

彼は同年代の子たちよりもはるかに注目されていますし、プロとして給料ももらっています。これは誇れることだと思うんです。ゲームばかりやっていると学校でゲームオタクだなんて言われることもあるかもしれませんが、一方でそういう若者が輝ける世界もある。

ビジネスチャンスとは違いますが、これまで否定されがちだったゲームがeスポーツとして新しい可能性を開いていく、そんな事例が増えていくといいですよね。弊社にできることは限られますが、愚直に取り組んでいくことが我々の使命です。

選手の成長と向き合うことが責務
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謎部えむ

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個人でesports業界向けのメディアとして「happy esports」を運営。業界分析やマーケティング手法、関係者インタビューなどをテーマに記事を書いている。esportsプレイ遍歴はまばらだが、大会はほとんどのタイトルを観戦。

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