PAGE: 3 / 3

若者が熱狂できるeスポーツにもっと投資したい ビットキャッシュの代表が選手に懸ける可能性

選手の成長と向き合うことが責務

――チームのオーナーや代表が保護者と直接話して説得するという例はいくつか聞いたことがあったんですが、伊草さんもされているというのは、本音を言うと意外でした。

伊草 自分にゲーマーの心理が分かるのか、プレイヤーに「しょせん企業の代表でしかない」と思われているのでは、と不安はありました。もちろん、私は選手ではないので一線が引かれているのは間違いありません。ですが、チームの一員ではありますし、選手や親御さんと向き合ってよかったなと心から思っています。

とはいえ、選手にとってプレッシャーになりすぎていた面は少し反省しています。CAGの選手インタビューを読んで、「ああ、そんなにプレッシャーを感じてたんだ」と(笑)。自分がテニスをやっていたので、勝たなければ意味がないという態度が強く出すぎていたのかもしれません。

スポーツの指導方法について最近よく取り沙汰され、強権政治やパワハラが問題視されています。私も自省しつつ、やっぱり上から押しつけられて成長することはあんまりないと思うんです。どうやったら強くなれるのか、選手が自主的に考えられる機会を作らなければなりませんね。褒めて伸ばすことだけが正しいわけでもなく、厳しさとどう両立するか悩みながら日々取り組んでいます。

チーム運営にあたっては、選手を1人の人間、1人のプロとして尊重することが大事です。eスポーツ業界でも選手とお金の問題を聞くことはありますが、そういう事態は弊社では絶対にありません。約束した給料はきちんと支払い、お互いに契約をしっかりと履行する。選手との信頼関係を結び、成長に向き合うことがオーナーとして当然の責務ですね。

――そうなると、選手も成長していこうとする意識が不可欠ですね。

伊草 そのとおりです。いまeスポーツ選手と言われている人たちも、昔はただゲームにのめり込んでいただけなんですよね。そこに大人たちが乗り込んできてeスポーツだプロだと言っているだけだ、と思っている人もいるでしょう。だからこそ、我々は彼らの世界観をリスペクトして、一方でプロ、アスリートとして生きていきたいのであれば求められることがある、と認識してもらう必要があります。

いきなりチームに所属させて「今日からプロ選手としてよろしく」「プロとして活躍できる舞台を用意したから」と言ってもきょとんとされるだけでしょう。少しずつ時間をかけて、プロとして活動することが自身の人生においてどういう意味を持つのかを考えてもらいたいですね。

いま危惧しているのは、プロとして活躍してほしい人たちとプレイヤーの間に隔たりがあるのではないかということです。結局のところ、市場を成熟させるには選手が熱狂し、自立し、成長してシーンを底上げしていかなければなりません。両者のギャップが大きくなると業界としても行き詰まるので、我々としてはその間を繋ぐ役割を果たしていきたいですね。

――そのためにも選手と話すことは大事ですよね。いまCAGは部門が増え、大所帯になってきていると思います。その中でどれくらい各選手と向き合えているのでしょうか。

伊草 やはり直接会って話をしたいので、機会も時間も全然足りてはいません。話すとやっぱり選手のことを好きになりますし、ちょっと勝てないくらいでチームを解散しようという気持ちにもなりません。私自身が彼らのファンになって、応援しているんです。

選手は増えていますが、いたずらに増やすつもりはありません。ちゃんとご飯を食べているか、悩みはないか、楽しんでいるか、そういった面でのマネジメントができなくなったら本末転倒ですから。ほかにも、Twitterでの投稿は選手自身の価値を落としてしまうようなものがないかチェックする必要がありますし、メディアに露出するときやファンに対する振る舞いもアドバイスしなければいけません。そこに目が行き届かなくなると、プロとして成長してもらうのは難しくなると思いますね。

資産は人

――ちょっと話を変えまして、個人的にはJCGを買収されたのはとても驚きました。どういう狙いがあるのかなかなか分からなかったんですが、今回のお話をうかがって氷解したんです。「日本の若者を元気にする」というテーマで見てみると、eスポーツコネクトで選手とコミュニティを育て、JCGで活躍できる場を作り、SHIBUYA GAMEでその活躍を取り上げる、とすっきり繋がります。

伊草 まさにそうですね。ちょうど9月にALIENWAREさんがCAGへのスポンサードしてくださることになったんですが、その決め手となったのが「ゲームプレイヤーやコミュニティを大切にする」という部分でした。これは別の見方をすれば、ゲームの裾野を広げるということでもあります。そこに共感していただけたのはありがたかったです。

――今回の取材のきっかけとなった1億3400万円の赤字のニュースについても、ここまでのお話に落とし込めば理解できますよね。事業がうまくいっていないことによる赤字ではなく、これからのための投資だと。

伊草 ぜひポジティブに捉えていただきたいですね。逆に、まだこれだけしか赤字が出ていないとすら言えます。成長中の産業では投資が前提になりますし、これが3億円や5億円になっても同様です。会社は大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、計画どおりなので心配はありません。体力はありますから、むしろもっと投資したいですね。

たしかに数字上は赤字が膨らんでいきますが、財務諸表に載らないような資産価値は高まっているんですよ。その中心にいるのが選手を始めとする「人」です。もちろん、赤字でいいわけではないので、営業部隊には売上について厳しく言っていますが(笑)。

――選手はこの数字が肩に乗っかっているわけですから、責任重大ですね。

伊草 資産とはいずれ価値を生み出してくれる存在です。ですから、チームと選手には頑張ってもらわないといけませんね。

――こういうプレッシャーは必要ですよね。では最後に、ビットキャッシュグループが今後eスポーツ業界でどういった存在を目指しているのかを教えてください。

伊草 企業であれプレイヤーであれ、ゲームを通じて世の中を盛り上げようとしている人たちが集う場になっていたいと考えています。仲間ができる、試合ができる、あの選手がいる、知りたい情報がある。そして自分自身がリスペクトされていて、人生が楽しくなる。そういう存在になって、若者が熱狂するシーンを作っていきたいですね。

前のページ
1
2
3
次のページ

謎部えむ

プロフィールを見る

個人でesports業界向けのメディアとして「happy esports」を運営。業界分析やマーケティング手法、関係者インタビューなどをテーマに記事を書いている。esportsプレイ遍歴はまばらだが、大会はほとんどのタイトルを観戦。

KEYWORD

キーワードから関連記事を探す

RANKING

人気の記事

  • DAILY
  • WEEKLY
  • MONTHLY

GAMES

注目ゲームから探す

ドラゴンクエストライバルズ

PUBG

Shadowverse

スプラトゥーン2

League of Legends

ストリートファイターⅤ

Hearthstone

Overwatch

PICKUP POSTS

編集部のおすすめ記事

TREND KEYWORD

注目キーワードから探す

LATEST

新着記事

NEW
NEW
NEW
NEW
NEW
すべての記事を見る