ドラクエを題材としたカードゲームの歩み〜カードゲームで『ドラクエ』を表現出来るのか?〜

スマホ向けカードゲーム『ドラゴンクエストライバルズ』(以下、DQR)がリリースされてから1年以上が経過した。国産デジタルカードゲームとしては『シャドウバース』に並ぶ知名度を誇り、今後の動向により注目したいゲームのひとつだ。

だが、ドラゴンクエストシリーズのカードゲームは『DQR』だけなのか?

実は発売元であるスクウェア・エニックスは、企業合併が行われる前のエニックス社単体だった頃から2つのドラクエのトレーディングカードゲームをリリースした事があるのだ。それらのいくつかの要素は『DQR』に引き継がれ、また引き継がれなかった物も存在する。

その2つのゲームを見ていくと、きっと『DQR』を新しい視点で見る事が出来るはずだ。このコラムではかつて存在していたドラクエのカードゲームを導線に、いかにして『DQR』というゲームが生まれてきたのかをじっくり振り返りつつ比較する。

なお、今回は取り上げないがこのコラムで紹介する物以外にもドラクエのカードゲームは存在する。興味を抱いた方は調べてみるとさらに新しい発見があるかもしれない。

ドラゴンクエスト カードゲーム 2000年~2002年

現在で言うカードゲームらしい体裁が整ったのはこのゲーム「ドラゴンクエストカードゲーム」からだ。

このゲームがリリースされたのはKONAMIが制作した『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』の流行直後であり、多種多様なカードゲームがバブルのように登場した時期である。記憶に新しいところで、ソーシャルゲームの流行期に一気に多くのゲームがリリースされた状況に近いだろう。その潮流に乗ってか、ドラクエでも初のトレーディングカードゲームをリリースしていた。

本作は50枚でひとつのデッキとして扱い、デッキが先に0枚になった側が敗北となる。デッキ自体をライフとする発想はデジタルカードゲームではあまり見かけないが、紙のカードゲームでは時たま見られるものだ。

『DQR』ではこの形式を採用しなかった。おそらくルールを『ハースストーン(※)』に倣っている事がその理由であると思われる。

※ハースストーン:ブリザード・エンターテイメントが開発したデジタルカードゲーム。『World of Warcraft』の世界観を背景にしている。

デッキは3種類のカードから成る。

パーティカード

モンスターや勇者側のキャラクターなどをひっくるめてパーティカードと呼ぶ。勇者側のカードは白色で統一されており魔物側は紫属性しか残っていなかったが、本来は緑、青、紫、黒の四属性に分かれている。

キャラクターたちはカードレベル、攻撃力、COST、HP、SPEED、TYPEと様々な要素で特徴づけがなされており、そこに特殊な行動も入ってくるのでキャラクターとしての再現度は『DQR』よりも精密である。その分戦闘のルールに関してはかなり複雑であるが、それはまた後述。

アイテムカード

アイテムカードとは、白属性、すなわち勇者側のキャラクターのみが装備出来るカード。『DQR』では武器のみ存在するが、この頃は防具や道具も存在していた。これらの装備を好きなキャラに装備させ、ゲームを有利に進める事が出来るのだ。

この装備とパーティカードのTYPEが繋がっており、このTYPEに対応した装備でないと装備が出来ないという凝りっぷり。これによって突然魔法使いがゾンビキラーを持って攻撃しに行くだとか、戦士がドラゴンローブを装備し始める様なイメージにそぐわない行動ができない様に工夫されていた。

TYPEに加えて、アイテムカードを装備する為にはGP(ゴールドポイント)というコストを支払う必要がある。原作でいうゴールドであり、GPは旧ドラクエカードゲーム特有の要素となっている。

クエストカード

クエストカードとは原作のシーンを再現したカードで、使用した瞬間に効力を発生する。例えば上記左の幼年時代はカードレベルが低いパーティカードしか行動出来ないように制限してしまう。ドラクエⅤの幼年期を再現した演出であり、ほんわかしたイラストで愛らしい雰囲気を出している。

基本的に原作イラストを使用している旧ドラクエカードゲームの中でも、これらのカードは攻略本に書かれていた挿し絵や書き下ろしのイラストを採用している様で、かなり見応えあるイラストが揃っているのも見所。

以上、「パーティーカード」「アイテムカード」「クエストカード」の3種類を組み合わせ、戦闘を行う事になる。

 

特徴的なルール

それでは早速ルールの説明に入りたいが、何せこのゲームのルール説明書は小さい上に目次含めて75ページもある大長編だ。だから、特徴的な所のみをかいつまんで紹介する事になる。ご了承願いたい。

小さい文庫サイズの攻略本よりもさらに小さいルールブック

経験値と収入

本作はドラクエ本編同様に敵を倒すと経験値が得られる。カード右上のレベルと同じ数の経験値を得られ、経験値5ごとにレベルが1ずつ上がっていく。レベルを上げる事で最初からレベルの高い仲間を行動できる状態で戦場に出したり、またターン開始時にGPを得られる。ここで言うGPとは『DQR』でいう所のMP(マジックパワー)のような存在だ。

『DQR』では「召喚魔法を用いてカードに秘められた呪文を唱えている」という設定からかマジックパワーという呼称が使用されている。それに対して旧ドラクエカードゲームにおけるGPとはゴールドポイント。つまり金で装備を買い与え、戦士や魔導師を雇うイメージだ。モンスターに関しては倒して仲間にするまでのコスト、と考える事が出来る。このGPはダメージの回復、状態異常の回復、相手ターン時の自陣パーティの行動権の回復などにも使用する。

前衛、後衛の要素

実は前衛、後衛という要素自体はこの頃から存在していた。ただし当時はウォールやブロックといった並べ方を参照する概念はなく、単純に前衛のメンバーしか攻撃の対象に選択できなかった。これによって回復効果を使うメンバーは後衛に、攻撃を担当するメンバーは前衛に置くという役割分担が可能になっている。もちろんイオナズン(※)などの特技を使えば後衛に干渉する事が出来る。

※イオナズン:ドラクエシリーズに登場する呪文のひとつで、敵全体に大ダメージを与えられる爆発呪文のこと

その為前衛のメンバーは常に後衛のメンバーよりも多くなければならず、前衛のメンバーより後衛の数が多くなってしまった場合は都度後衛から前衛にパーティを移動させる必要がある。

この要素は次のドラクエカードゲームでは廃止されたが、また『DQR』で形を変えて復活しているところを見ると、本作の影響が少なからずあるのかもしれない。

超細かい戦闘表現

そして何と言ってもこのゲームの真骨頂は、まるでドラクエ本編かの様な細かい戦闘がカードゲーム上で行われる事である。このカードゲームでは行動ステップ、判定ステップ、終了ステップの3つが存在する。

行動ステップ
攻撃プレイヤーが攻撃するカードを1枚選択。防御側も1枚戦闘させるカードを選択し、それで反撃を行うかを選択する。またこのタイミングであらかじめ道具を使うか、特殊能力を起動するかも宣言する。

判定ステップ
特殊効果や武器、防具の修正値を含めてダメージがどれだけ出るかを計算し、確定させる。行動ステップで防御側が反撃を宣言していなければ攻撃側が一方的にダメージを与え、反撃を宣言している場合はすばやさが早い方が先にダメージを与えることができる。
このダメージはデッキから受けた分だけ裏向きのままカードを上から1枚ずつダメージを受けた対象に乗せていく。ダメージが体力を上回った時パーティカードは撃破され、ダメージカードと装備していたアイテムを捨て札に置く。そのパーティカード自体は対戦相手の経験値ボックスに置かれ、自身の経験値となる。そしてそのキャラクターのレベルに応じたGPを得る。

終了ステップ
隊列の判定を行い、前衛メンバーより後衛にいるパーティが多ければその分後衛から前衛に移動させる。それが終わったら別の行動可能なパーティカードで行動ステップからもう一度戦闘を行うか、戦闘フェーズ自体を終わらせるかを決定出来る。

戦闘フェーズ終了後、どちらかのパーティが全滅していた場合は全滅ペナルティとして5枚のカードがデッキの上から墓地に送られる。

……というわけで、『DQR』と比べると非常に細かい戦闘が行われる。一見して分かりづらく、こうしてかいつまんで説明した事でかえって分かりづらくなったという方もいるだろう。説明書では戦闘フェーズの説明が36ページから55ページまで計19ページにも上る為、こうしてまとめるのも難しかったほどだ。

初代ドラクエカードゲームはとにかく原作の戦闘をカードで再現しようとしたのだろう。確かに普段デジタルで行われている複雑な処理を全てやるとするとこれくらいはかかるのかもしれない。だが、ことカードゲームにおいてこの煩雑さと分かりづらさは致命的では無いだろうか。

これではいかんと感じたのか、次回作では説明書で見開き5ページ分とシンプルになっているし、『DQR』ではもっと単純になっている為。混乱する事も無い。

また独力でルールを知りたい場合、構築済みデッキ等を買わないとルールを把握出来ないことが、初代ドラクエカードゲームの最も大きな欠点だった。特に当時はカードショップでのルール講習会なども少なかった印象があり、既にプレイしている友人に教えてもらったりアニメでざっくりとルールを把握しているなどという背景が無ければカードゲームとして遊ぶことは出来なかった。

遊戯王等が広く親しまれたのはアニメによって大まかなルールが分かった事も大きかったのかもしれない。例えそれが発動された魔法カードを「サイクロン」で無効化して破壊出来るような物であっても、買ったカードでゲームをするというのは楽しい物だ。どんな形であれカードを集めればすぐにゲームが出来る様な風土があったゲームは今でも多く残っている印象がある。

2代目へ引き継がれたもの、引き継がれなかったもの
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