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「大人」に訴え続けるeスポーツ業界アナリスト 但木一真が数字にこだわる理由【前編】

eスポーツというビジネスモデルを組み込む覚悟が必要

――日本って、各組織が個別に利益を追求しながらやっていくのが伝統的な気がするんです。野球でも、メジャーリーグでは放映権を一括管理してそれを各チームに分配する形ですが、日本ではそれが個別のチームに委ねられています。ビジネスモデルという点では、そこを打破するために何が必要でしょうか?

但木 うーん、それは非常に難しいですし、私もまだ解決法を考えている途中なのですが、すごく概念的なことだと必要なのはパブリッシャーの覚悟ですね。

というのもテレビゲームと呼ばれるものを一般家庭でプレイをして遊んでいた頃から、ゲームを作っている会社のビジネスモデルは、ソフトの売り上げだけでした。ずっとゲームソフトを1本いくらで売って、それをお客さまに買ってもらい収益を上げる仕組みを30年40年と続けてきたわけです。

次々に儲けたかったら、新しいタイトルを作ってそれをまた売る、それを連続してやってきたのですが、ただ違うビジネスモデルでもゲームは儲けられるんだと証明したのがモバイルゲームだと思います。

家庭用ゲームとモバイルゲームでは、昔は家庭用ゲームの収益が上でした。しかしゲームを売らないけどフリーでプレイしてもらって、もし良ければ課金してねというモデルにしたところ、収益は徐々に近づいていって、今はモバイルゲームの方が売上規模が大きくなってきたと。

――確かに、ゲームへの課金ハードルは今かなり低くなってきていますね。

但木 みんながモバイルゲームのビジネスモデルに慣れちゃって、ゲームは買わないけれど課金はするように、だんだん人の意識が変わってきました。

じゃあこれからどうするか。色んな選択肢がある中で、eスポーツはひとつのビジネスモデルでもあるんです。パッケージを売るだけで終わりではなくて、興行という催しで盛り上げる機会を定期的に作っていき、そこでユーザーの経済活動を起こしてゲーム収益を上げていく。

パッケージ売上からきちっとeスポーツをビジネスモデルとして組み込んで、そこで収益を上げていくことを、実はパブリッシャーが覚悟しないといけないと思います。自分たちのモデルだけだと、これからはユーザーが付いてこないんじゃない?ということです。何せeスポーツはゲームがないと競技も興行もできないですし、パブリッシャーが許諾をはじめ様々なことを献身的にやらないといけません。

今eスポーツの流れは、みんながゲームで競技をすることに興奮して、それが面白いと思っているところまで来ているので、ここでパブリッシャーが決意を持って仕組みを作ってやると「覚悟」をすれば、これから色んなものが動き始めるのでは?と思い描いています。

――ありがとうございます。非常に腹落ちがしました。自分たちだけではなくて、他の人に委ねることも含めて覚悟はすごく大事ですよね。パブリッシャーだけではなく、興行の企業、イベンター、マネジメントに対しても、しっかり一緒に手を取りながら盛り上げていこう、ってそこになんかこうバッて胸襟を開いてあげるような覚悟というか。

但木 素晴らしい表現で、おっしゃる通りだと思います。eスポーツの面白さはステークホルダーの多様性にあると思います。例えばゲーム実況と呼ばれるようなもの、動画配信サービス、YouTube、ニコニコ動画、Twich、OPENREC.TVもそうです。

eスポーツでも新しい人たちが出てくるので、いかにこう手を取り合って一緒にやっていきましょう、同じゲームを愛する者たちで一緒に盛り上げていきましょうっていうような意識になれるかどうかが重要だと思います。

2022年、市場規模100億円なるか

――ちなみに、今プロレスの市場規模が大体120億円、将棋が42億円らしいです。野球が大体2000億で、jリーグは1000億。

但木 そうですね。100億円というのを目指してそこに到達すると予測をしているのですが、突拍子のない数字ではないと思っています。というのもeスポーツというのは大きく見るとゲーム業界の一部にしか過ぎないんです。

今日本のゲーム業界の市場規模は、家庭用ゲームで約4400億円、モバイルゲームで1兆円を超えています。約1.5兆円という数字の中での100億円は少ないですよね……。1.5兆円の市場規模の中で、どれだけeスポーツが占める割合が増えていくか、まだ今のところの予測では「100億円に過ぎない」というふうに見た方がいいのかなと思います。

――ゲーム業界という括りで見ると確かに、まだほんの一部でしかないですね。

但木 はい。さらに、いろんな人がeスポーツという言葉に対する嫌悪感的なものを持っていらっしゃるんです。2つあって、ひとつは「ゲームをスポーツとみなすこと自体がどうなの?」という人たち。いわゆる外部の人たち、まだあまり馴染みのない人たちが感じている違和感ですね。もうひとつは「今までいろんな場所で格闘ゲームをやってきて活躍してきた」、「昔はバーチャファイターとかもありましたよ」という内部の人たち。

結局eスポーツって、色々なものをひとつにまとめた便利な言葉に過ぎないんです。その実態は各ゲームタイトル、ジャンルにそれぞれ違うファンやプレイヤーが付いていて、それぞれにシステムがあります。eスポーツはその集合体というイメージです。

現在、日本でeスポーツ対象のゲームタイトルは30くらいだと認識していて、30もあるタイトルがそれぞれ今から盛り上がっていく中で、この100億円という数字をどういう風に見るかです。今は30でも、これからタイトルが増えていく可能性は高いと推測しているので、それぞれが成長して大きくなってひとつの生態系ができていきます。全て合算すると、これから100億円を遥かに超えるかもしれません。

 

後編に続く。

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みどりむしタマコ

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映画をこよなく愛するひきこもりライター。オンラインゲームの時代に乗り遅れてしまったが、じわじわとオンラインの波に乗っては胸を躍らせている。新参者の視点から見る、eスポーツの世界のおもしろい発見をお届けします。

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