『SFV』『鉄拳7』『DBFZ』、多数の格ゲーを網羅するコメンテーターSajam氏の極意

eスポーツイベントとは切っても切れない関係にあるのがネット配信。大きな大会ともなると、同時視聴者数が10万人単位になるゲームも存在しています。

そんなネット配信において欠かせないのが、試合を外から盛り上げるコメンテーターの存在です。プロのコメンテーターは、ゲームを知り、話術に長け、生放送に臨機応変に対応できることが求められます。

格闘ゲームコミュニティでもそれは同じで、数ある格闘ゲームのワールドツアーにおいて、配信及び実況者は非常に重要です。Sajam氏は主に『STREET FIGHTER V ARCADE EDITION』(以下、SFV)や『鉄拳7』などのタイトルで活動されるコメンテーターです。

福岡で開催された「EVO Japan 2019」、『SFV』部門のコメンテーターを担当する為に来日したSajam氏。
コメンテーターを生業とする数少ないプロフェッショナルである彼に、プロの極意を聞きました。

プレイヤーに負けないプロ意識、コメンテーターの極意とは

――コメンテーターとして、これまでいくつの大会に招待されましたか?

Sajam 難しい質問ですね。2018年でいうと、週末開催の大型イベントを恐らく40ほど、小型のも数えれば80ほどになるのではないでしょうか。アメリカ開催の大会が多いのですが、日本やシンガポールのイベントにも出向きましたね。

来年はヨーロッパやフィリンピンのイベントにも行きたいなと考えています。それからもちろん日本も。日本に来るのは大好きですからね。

――格闘ゲームを始めたキッカケは何ですか?

Sajam 『STREET FIGHTER IV』(以下、SFIV)が初めての格闘ゲームでした。アメリカだとそういう人たちを、ゲームの発売年にちなんで「09er」と呼ぶのですが、僕もその1人というわけです。その時は高校生だったので、エンジョイ勢として遊ぶだけでした。その後、最初に本格的にプレイしたのは『Injustice』です。

『Injustice』と『Killer Instinct』の2タイトルに関しては、大学生のころだったので、プレイヤーとして大会に参加したりもしていました。僕の住むカリフォルニアは格闘ゲームが盛んなので、それがやり込むキッカケになったともいえます。

それから2年くらい後の2015年の「SoCal Regionals」という大会で、初めて仕事としてコメンテーターを担当しました。

――なぜプレイヤーからコメンテーターへと転向したのですか?

Sajam 始めはYouTubeですかね、自分のやっているゲームの攻略動画をアップしていました。プレイヤー時代にも、コメンテーターがいない場合など、ぶっつけ本番で配信席を任されることがありました。そういう経験を積みながら、実況の楽しさがわかったんです。

それと格闘ゲームコミュニティではプレイヤーが数多くいるのに対し、コメンテーターの数が少ない。なので需要もあるなと思ったんですね。

それから、自分で大会の配信を見る時、コメンテーターがチャットで叩かれているのが気になっていたんです。「こいつらと一緒にはなりたくないな」と思った時、それなら自分が叩かれない実況をしようと思ったんです。

――コメンテーターでの収入のみで生活しているのですか?

Sajam そうですね。大会の仕事と、それから個人のTwitch配信、YouTubeへの投稿。この3つで十分な収入が得られています。

ゲームで食べていける、というのは夢のようなことなのですが、反面私生活はズタボロです(笑)。週末は大会で家にいないし、平日はゲームをプレイしなければならないし、昨年は苦労しました。
プレイヤーの方々にも多い現象の様ですが、好きだったゲームが仕事に変わる時、ゲームがしんどくなってしまうのです。
それがキッカケで挫折してしまうプレイヤーも多いのですが、自分は割り切って、しっかりとゲームを「仕事」として捉えていきたいと思っています。

『SFV』のトッププレイヤーである、ときど選手(Twitter)は、筋トレ、ゲームのトレーニングモード、対戦、動画研究をスケジュール建てし、日に7時間と決めてセルフマネジメントしているそうなんです。それを聞いて、自分はコメンテーターではありますが、プロであればしっかり、日に6ないし7時間、目的をもってゲームと向き合う生活を目指しています。
趣味が仕事になっている、というのは幸せな事なので、そこに甘えず、真剣にゲームと向き合うことで、ときど選手の様に、業界に還元出来たらと思っています。

――「仕事」という観点から、コメンテーターとプレイヤーではどのように違いますか?

Sajam プロのプレイヤーの方々は、もちろん結果を残してこそなのですが、スポンサーがつくことで収入を得ています。その場合は契約があるので、ある程度の安定が見込めます。コメンテーターは完全に個人なので、大会での仕事を得られるために、日々自己管理が欠かせません。数が少ないとはいえ、競争はありますからね。特に「誰がTOP8の実況を担当するか」など、実力が無いとやはり仕事にはできないと思います。

プレイヤーと違うのは、コメンテーターの場合、沢山のゲームを広く知ることで、仕事を積極的に増やせることですね。僕の場合『SFV』がメインですが、『鉄拳7』や『ドラゴンボールファイターズ』の実況も担当できます。なので、自分でゲームの情報を積極的に仕入れ、それを大会側へ売り込むことも大事ですね。

――ゲームの知識はどのように仕入れているのですか?

Sajam まず沢山プレイすることですね。そのためにもTwitch配信を仕事の一部としています。ゲーム内の駆け引きや、それに関する細かな状況を瞬時に分かるようになるためには、プレイすることが不可欠です。

それから大会動画を研究することですね。自分の地域に限らず、日本のウィークリー大会の配信なども見ています。例えば、秋葉原の大会で猛威を振るう春麗プレイヤーがいて、自分は配信を見てそのプレイヤーに目をつけていたんです。すると今日、『SFV』の予選にてそのプレイヤーが中国のシャオハイ選手(Twitter)を下したんです。傍から見れば大番狂わせのようですが、研究の甲斐あって僕は彼のことを知っていて、適切な解説ができたと思っています。

――喉のケアなどはされていますか?

Sajam 特にはしていないですね。日本のコメンテーターであるアールさん(Twitter)などはボイストレーニングをされているらしいですね、プロとしてとても尊敬します。

自分も、大会の前後はお酒を控える等、多少気を使うようにはしています。それでも「EVO」などの長丁場になるとかなり喉を消耗しますね。ただ中には大会前夜に飲み明かして、それでもフルの声で実況できるやつもいるんです。よく共に実況するTastySteve(Twitter)のことなんですけど(笑)。あいつは意味が分からない。

――ご家族はコメンテーターというキャリアについてどう考えていますか?

Sajam 僕の両親は、ゲームをすることに対しても、「やることが終わっているなら構わない」というようなスタンスだったので、大きく反対されることは何もありませんでした。コメンテーター1本でやり始めた時は心配もかけたかと思いますが、コミュニティの成長のおかげで、ESPNで僕の実況が放映されたことがあり、それを見て安心したと言ってくれました。

格闘ゲームコミュニティを盛り上げるためには

――日本のコメンテーターとは交流はありますか?

Sajam そうですね、僕自身日本語の配信を見ることもあるので、日本のコメンテーターの方々も大好きです。ヌキさん(Twitter)やアールさんなどの実況は、言葉が解らなくても迫力があり、見ている側も盛り上がることができます。また、ハメコさん(Twitter)などとも交流がありますね。

日本に限らず、世界中にコメンテーターはいます。例えばフランスのKen Bogard(Twitter)さんなんかは凄いです。1つの大会を、マイク1本で全て1人で実況し遂げるんです。僕がそんなことをしたら喉がつぶれてしまいます(笑)。

言葉が解らなくても、各国の実況を聞くのは面白いですよ。それぞれ色があって参考になります。

――アールさんの実況者育成プロジェクトについてどう思いますか?

Sajam ACTPのことですね、知っています。今日も門下生の方が実況されているのを聞きましたが、とてもいい活動だと思います。

実際Twitterなどで、どうすればコメンテーターになれるかと聞かれることも多いんです。それに応える形で、自分が実況中に考えていることをまとめた動画も、YouTubeにアップしています。

アールさんは日本の格闘ゲームコミュニティでも、テレビ出演など、特に大きな仕事を担当しているイメージです。そう考えると、アメリカで近い立場にいるのは僕なのかなと。なので、もしかしたら似たような育成プロジェクトをやってみるのも面白いかもしれませんね。

――格闘ゲームコミュニティにとって大切なものは何だと考えますか?

Sajam やはり、各地域の小型イベントでしょう。日本でも大阪や東京などで毎週開催されているイベントがありますね。これらのイベントはコミュニティの盛り上がりに不可欠だと思います。各地域それぞれに違った色が出るのもいいですね。

自分の住むカリフォルニアでは、アメリカでも最も大きいウィークリー大会である「Wednesday Night Fight」が開催されています。自分はいまでもなるべく毎週そこへ顔を出すようにしていますね。どんなに大きな興行的イベントよりも、こういう小さいイベントが沢山開催されるようになればいいなと思います。

それからYouTube等のコンテンツですかね。自分は積極的に取り組んでいますが、そういう人が多くなればと思います。

これからの活動

――もしeスポーツ業界に居なかったら何をしていますか?

Sajam 先生かなと思います。人前で喋ったり、物を教えるのが好きなので。それからレスリングも好きなんです。プロレスじゃないほうです。自分も高校時代レスリングをしていたんです。なので、レスリングのコーチとかもありですね。

――これからも格闘ゲームのコメンテーターとして活動していきますか?

Sajam もちろんです。もし辞めるとしても、YouTuberか配信者への完全転向くらいで、ゲーム以外のところで活動している姿は自分では想像できません。

バトルロイヤル系ゲームやカードゲームも好きで、それらのイベントでの仕事もありましたが、やはり一番好きなのは格闘ゲームなので、格闘ゲームを盛り上げていきたいですね。

――今の仕事にやりがいを感じますか?

Sajam もちろんです。言葉では説明できないほどに今の生活が気に入っています。僕の場合、好きが高じてのめり込みすぎないかが心配どころです。2018年も相当忙しかったですし(笑)。

――貴重なお話ありがとうございました。

 

スサキリョウタ

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ウメハラ選手の動画を見て格闘ゲームを始めたウメ信者。現行のゲームではストV/鉄拳7/DBFZをプレイ中。色々やるせいでどれも上達しないが、ガチ動画勢。格闘ゲーム以外では、ハースストーンとFPSを少々。英語での対応可能。「国内外の格ゲーe-sportsシーンを伝えていきたいと思っています!」

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