【Overwatch】「もし僕が辞めたらこういう風になりたいな」彼の眼は希望に満ちていた|僕らのヒーローインタビュー:CLAIRE

「なぜ『オーバーウォッチ』を続けているのか」

「JUPITER」所属のCLAIREは、険しい日々を乗り越えてきた。

『オーバーウォッチ』がリリースされた初年度、彼は苦汁を嘗めながら耐え忍んだ。
結果はなかなか身を結ばず、一年に及ぶ雌伏の時を過ごすこととなる。

そして翌年の2017年、長きに渡る激闘の末に彼は日本一の座へと輝くことになるが、勝利の余韻にひたることすら許されなかった。
次に目指すは太平洋No.1。戦いの舞台は国内を飛び出し、海の向こうへと移った。

そこからの戦いは苛烈を極めた。各国の代表は、正に百戦錬磨。尋常な相手ではなかった。
そうして戦い続けること一年半、2018年の冬に一つの結果が実を結ぶ。多くの日本チームが敗れ去った栄光の舞台「コンテンダーズ・パシフィック」にて前代未聞の2位を掴み取ったのだ。

しかしその大会を最後に当時の所属チームは休止。実質的な解散を余儀なくされた。

所属チームは無くなった。太平洋でも屈指のチームとして実績を残した。
もう十分ではないか?

しかしCLAIREは「JUPITER」と合流し、再度イチから太平洋の頂点を目指している。

終わり無き競技の世界に身をやつし、ただただ『オーバーウォッチ』に没頭し続ける彼の姿には、多くの勝利と敗北が宿っている。
実績・実力共に国内No.1。しかし挫折の予感は数知れず。それでも全て乗り越えてきた。
どうしてそこまでして『オーバーウォッチ』を続けられるのか?

「純粋に『オーバーウォッチ』が好きなんだと思います」

一拍おいて答えた彼の言葉はとてもシンプルなものだった。

ただ一筋に捧げた8年間

音楽をこよなく愛する少年だったCLAIREは、兄達の後ろでゲームを見ることが好きだった。二人の兄は稀有なゲームフリークスだったので、少年CLAIREがゲームをプレイするようになったのは極めて自然で当然の流れではあった。
しかし兄達の予想を遥かに超えて、少年はゲームの世界にのめりこみ、修羅なる競技の世界へと足を踏み入れることとなる――。

「仕事に行ってる間にレベル上げやアイテム集めしといてくんない?」

12歳年上の兄にそう頼まれたのが、初めてオンラインゲームを触ったキッカケでした。小学校高学年の頃です。
それまでは兄のゲームプレイを見てるだけで満足してて、自分からゲームを触ることはほとんど無かったんです。

兄は二人いて、どちらとも格ゲーにどっぷりハマっていて、二人して闘劇(※)に出場するような人たちでした。ゲーム色の濃い家庭でしたね。

※闘劇――エンターブレインが主催していた大規模格闘ゲーム大会。2012年を最後に閉幕した。

まあ、そういうわけで雑用にせよ何にせよ、最初に触ったゲームはMMOでした。今思うとお兄ちゃんはゲーマーとしては効率いいですよね。ゲームの作業に弟を使うんですもん(笑)。
しかも弟もゲームを楽しんでくれてる。この構図はなかなか上手い、完全なWIN-WIN関係でした。

あと一回り離れてるからか、昔からお兄ちゃん達のお世話になったりお下がりを貰うことが多かった。だからPC関連であまりお金が掛からなかったんです。そういったこともあってかオンラインゲームにハマった後も継続して続けることが出来たんだと思います。

オンラインゲームを始めてから4年近くはMMOばかりやってたんですけど、MMOのゲーム仲間に「『スペシャルフォース』※を一緒にやってみようよ」と誘われたのがキッカケで、初めてFPSに触れることになりました。

※スペシャルフォース……韓国発のオンラインマルチプレイFPS。国内では2006年にサービスが開始し、2016年にサービスが終了した。

ここからFPS……というか『スペシャルフォース』にどハマりしました。

『スペシャルフォース』をやってた方やオンラインゲームを何年か続けてる方なら分かると思うんですが、新しい競合タイトルのゲームが出ると普通はそっちへ行ってしまうんですよ。
『スペシャルフォース』との競合だと、当時は『サドンアタック』や『Alliance of Valiant Arms』。こういう人気タイトルに普通は飛びつくし、事実多くのゲーム仲間は別のゲームへと移行してました。

でも僕はやり続けたんですよね、『スペシャルフォース』。8年間。

『スペシャルフォース』を8年間やってる間に、続編となる『スペシャルフォース2』がリリースされたんですけど、でもそれすら殆どやりませんでした。
本当に、ただひたすらに『スペシャルフォース』。

でもオンラインゲームっていわゆる寿命みたいなのがあるじゃないですか。人がいなくなって、対戦ゲームとしての体裁が整わなくなるような時。
『スペシャルフォース』にも例外なく「その時」が来てしまいました。
最後の方は全体の同時接続が300とか。対戦のモードが団体戦だけでも全部で5つ以上あるのに、全部合わせた同接が300です。これはもうゲームが出来ないと。
8年目にして遂に『スペシャルフォース』から離れることを決意しました。

『オーバーウォッチ』に触れるのはそこから数年後になります。

チームにおける役割 その目で見据えるのは仲間の『リズム』

巨星JUPITERは結成から間もない新星でもあるが、その殆どが馴染みのメンバーであるため、国内随一の強さと厚いファン層を誇っている。だが実質的な構成は、今までと少しだけ違う。タンクとDPSにメンバーの変更が加えられている。

『馴染み深いメンバー』と共に挑戦する『今までと少し違う構成』。
その中でCLAIREはどのような役割を果たしているのだろうか。

最近の僕は、少し俯瞰して自分のチームを観察することが増えたかもしれません。

例えばタンク陣の意見とDPS陣の意見がそれぞれ全く違う場合があるとします。
そういう時に僕もガンガン違う意見を言い合ってしまうと、議論が着地しなくなるんです。

意見がぶつかり合い過ぎると、「じゃあ最終的にどれがイイの?」とか「どういう風にしていくの?」といった部分で、冷静な結論が出せなくなってしまう。
特に練習試合が終わった後って血が上っているじゃないですか。そういう時に話し合っても無駄に白熱するだけで、生産性のある結論は生まれません。

だから今ではまとめ役を務めたり、進行の調整をするようになりました。

あと結構メンタルにくるじゃないですか試合って。
特に6人というチームゲームで全員が全員常にメンタルが安定するなんて、口で言うのは簡単ですが、実際にはそう簡単に行きません。

一緒にやってて「大変なんやろな」って思ったら早めに話し合いを終わらせたりとか、次のスクリムまで少しでも時間空けたりとか、そういうメンタルケアの方に最近は重点を置くようになりました。

それで最初はメンタルケアやリーダーシップの勉強をしよっかなって思って、本とかも買ってみたんですよ。『リーダー論』とか『組織論』とかについて色々と。
でもそういう本って「仕事するのが当たり前」とか「でかい組織にいる」ことが前提で、僕たちにとってはもはや真逆というか、全然違うシチュエーションの中での話に過ぎなかったんですね。
ハッキリ言ってしまうと「あまり参考にならないな」と感じてしまいました。

そういった経験も踏まえて、今僕が意識してるのはチームメイトとの「近づきすぎず離れすぎない距離感」です。皆の性格や行動パターンの『リズム』を分析できるような立ち位置を保つんです。
そうやって皆の『リズム』を把握して、それぞれの『リズム』が崩れ過ぎないように、逐一調整することを意識しています。

もちろん時にはスパッと(話を)切ったりしてしまいますけどね。全部を聞くことは無理なので。そういう取捨選択をしていくことも僕の役割の一つとして受け入れてます。

僕のゲームの中での役割は『サポート』ですが、気が付いたらゲームを超えた領域でも『サポート』に似た役割になってましたね。

分からないものは分からない、トライあるのみ

あとは僕の役割で重要な部分は、試合の分析ですね。

ちょっと前まではめちゃくちゃ動画を見てました。それはもう穴が開くほどに。分からないこと、分かり辛いことばかりなので『オーバーウォッチ』って。
だから一日中ずっと動画とか見て、分からんながらに分析してたんです。

そしたら完全に分かったことが一つだけあって。それは「分からんもんは分からん」ということ。

動画を見続けると『分かるもの』と『分からないもの』がほぼハッキリしてきます。
そこで『分からないもの』を理解しようとしてそこにフォーカスをかけるとします。するとですね、何回見ても「分からんもんは分からん」という結論になるんです。
どうしても理解できない、確信が得られない場面というのは存在すると。見るだけでは、分析するだけではどうしようもない。

だから今は一周回って色々試すことを重要視してます。
分からないものは取り合えずやってみよう。やってみることで分かることがいっぱいあると。
もう今は試すことが最優先になりましたね。トライあるのみです。

あとサポートの役割として後ろにいることが多いので、ULT管理や全体の隊列や前衛とのコミュニケーションが試合中の自分の役回りになりますね。
今のメタ※だと『後ろを守る役』というよりかは『前と後ろのパイプ役』になったりすることが多いです。

※メタ――主流の戦法や構成を意味する。ゲームによって意味合いは僅かに異なる。

今までもそうでしたけど、特に今のメタはULTの被りやULTの使い過ぎが多いんですね。
なのでULTの使い方や、相手のULTに対する返し方などは意識して指示してます。あとは前衛に対して「待った」をかけるのも僕の役になりますね。

バランスの良いメンバー コンテンダーズは期待して欲しい

チーム自体はかなり上手くいっています。

具体的な性格の話になりますが、rayuさんってけっこう慎重な性格で、それに対してけんもくん(kenmohororo)はガツガツと「いけるいける」と攻撃的に立ち回るタイプなので、その二人でまずバランスが取れてます。
メインタンクのSamuraiDは緩急つけていくタイプなのでrayuさんともけんもくんとも合わせられるんです。だから総合的に見て、かなりバランスは良いです。

それと単純にけんもくんのザリアが強い。今まで見てきた日本人のザリアの中でも、一番うまい。

多分皆の中で印象に残ってるザリア使いというのは何人もいると思うんですけど、その誰よりも上手いと僕は感じています。
ただ時々勢いよくいきすぎて「あぁっ」って言いながらやられてる時もありますけどね(笑)。それはそれでご愛嬌です。

コンテンダーズ※に関しては、不安な相手はいるにはいますね。

※コンテンダーズ――「Overwatch Contenders 2019 Season 1: Pacific」。太平洋地域の頂点を決める公式大会。日本からは「JUPITER」が出場している。

例えば「Global Esports」。
あのチームとは相性が良くないって個人的に思ってて……もちろん分析はできてて対策はあるんです。
でも何百何千時間やって染みついた動きを一気に変えるのって、口で言うのは簡単ですけど、いざ実行しようとするととんでもなく難しいじゃないですか。
そういう皆の根底に染みついた動き自体が、「Global Esports」と相性が悪いのかなと感じてます。

あとは「Cyclone Coupling」ですね。こことは何度か練習試合をしてて勝ってはいるんですけど、やっぱり構成とかが飛びぬけてるんですよ。
他のチームだったら絶対しないような尖った構成を平気な顔してやってくるので、彼らとの試合はまるでギャンブルをしているような気分になってきます。

他には「Talon Esports」も気になる相手です。
彼らのメインタンクがHaruっていうプレイヤーに変わったんですけど、この人って韓国の強豪チームの元メインタンクなんです。
しかもHaru以外にも、DPSとして有名なoPuToも入ったことで、結構バランスが良くなった気がします。

あと今回はパッチがあるじゃないですか、新キャラの『バティスト』が追加されるやつです。
自分で言うのも複雑ですが、JUPITERメンバーって昔からパッチの切り替わるタイミングが弱いんですよね。5月とかの決勝で新パッチがあたる可能性があるので、その切り替わりタイミングはかなり怖いです。

とは言え、全てのチームに対して五分以上の自信があるので、期待してもらって大丈夫です!

彼らがいなければ、今の僕はいなかった

尊敬している人が誰かと聞かれたら、絶対に外せない人が3人居ます。

AktmさんとVaderさんとNovadyさんです。皆、「USG Iridata」に所属していた元チームメイトですね。
初めて日本一を獲った時のメンバーでもあります。

Vaderさんは圧倒的なリーダーシップ、Aktmさんはチームメイトへのケアに優れてました。
Novadyさんは同じサポート同士というのもあって、悩みを聞いてくれたりして、特にお世話になったかもしれません。

そういう人達と出会えたからこそ、今の自分があると思ってます。
この3人と出会わなかったらとっくに『オーバーウォッチ』を辞めてたかもしれません。それくらい僕にとっては大きな存在です。

あと尊敬しているのとは少し違いますが、思い出深いのはta1yoくんですね。
「USG Iridata」で日本を制した時はチームの連携力と、ta1yoくんという新戦力が加わったことで優勝できましたし、ワールドカップの時もta1yoくんのお陰で色々と活躍できました。
試合中も声を凄く出してくれてて、ずっと一緒にやってきましたから……本当に思い出深いプレイヤーです。

僕の中の衝撃、新しい出会い

何故僕は『オーバーウォッチ』を続けているのか。
辞める節目やタイミングは、今まで何度もありましたからね。

純粋に『オーバーウォッチ』が好きなんだと思います。

他のゲームとは比べ物にならないくらいの達成感、そして1試合ごとの疲労感。そこが『オーバーウォッチ』の唯一無二に近い魅力だと感じています。

ただどこかのタイミングで(選手は)辞めなきゃなと思ってます。
自分の考えとして、30歳くらいが一流のゲーマーとして活動する限界に近いと思ってて。今僕は27歳なので、どうしても自分の辞めるタイミングというのは意識するようになってきました。
もちろんまだ辞めるわけではありませんよ。でもどこかのタイミングで線引きしようとは考えてます。

冒頭で話した通り、自分は一つのゲームをがつっと集中してやるタイプで、シングルゲームすらやらないタイプなんです。
だから『オーバーウォッチ』を辞めた後のゲームは想像もつかないし、やろうとも思いません。選手活動を辞めた後のゲームプレイは、現時点ではほとんど思いつかないですね。

ただ「JUPITER」に所属して、「JUPITER」の雰囲気に漬かったことで、ゲームをやるというよりかは『eスポーツ業界』に対して関わってみるのも面白そうだなって思いました。

本当に正直言いますと、もし「JUPITER」に入らなかったら、そのまますぱっとゲームとお別れしていた可能性もあったかもしれません。「JUPITER」以前は、そこまでeスポーツ業界に惹かれていませんでした。
でも「JUPITER」に入ってからは色々と面倒を見てくれて……。何て言うか凄く居心地が良かったんです。

そこで純粋に「もし僕が辞めたらこういう風になりたいな」って思いましたね。

僕の中の衝撃です。eスポーツにもこういう世界があるんだなって、正直に感動しました。
良い意味で「JUPITER」から刺激を受けています。

これから僕がどうなるかは誰にも分かりませんし、僕自身にも分かっていません。
ただ選手としての『終わり』を見据えつつ、そこに向かって全力で走り抜こうと思っています。

CLAIRE(@ow_claire

1991年生まれ。三重県松阪市出身。小学生の頃からオンラインゲームを嗜み、24歳の時にオーバーウォッチと出会う。後にプロの世界へ。2017年に国内大会「GeForce CUP」にて優勝。翌年、公式のメジャー大会「Overwatch Contenders 2018 Season 2: Pacific」にて2位に輝く。2017年・2018年ともに日本代表選手として「Overwatch World Cup」にも出場。2018年の12月からはプロゲーミングチーム「JUPITER」に籍を置いて活動している。
取材・執筆:gappo3
写真:石川純平

gappo3

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Green Leaves所属。現在はチームのマネージャーを担当。選手としての経験と、チームのマネージャーとしての活動を武器に、eスポーツに関わる様々な取材・執筆活動を行う。

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