「選手の活躍の場や表に出るチャンスをもっと用意したい」プロゲーマーを支える元日本代表、JeSU羽染貴秀氏インタビュー

日本でのeスポーツ元年とも言えるほどの熱狂が沸き起こった2018年は、eスポーツ業界の急速な拡大をもたらしました。

多くのプロチームやプロゲーマーが次々と誕生し、様々な大会やリーグ戦で華やかな活躍をする裏には、ゲーマーたちを支え様々な業務をこなすプロフェッショナルたちがいます。その中にはかつてゲーマーとして活躍しながらも、今はeスポーツ界を支えるための仕事に就いている方々も存在します。

SHIBUYA GAMEでは、ゲーマーとしては最前線を退きながらも、それぞれの立場でeスポーツ界を支える方々にスポットを当て、今、どのような形でeスポーツと関わっているのかを伺ってきました。

今回貴重な時間を割いていただけたのは、かつて「FIFAインタラクティブ・ワールドカップ(現:FIFA eWorld Cup)」で『FIFA 12』日本代表として活躍し、現在は「日本eスポーツ連合(JeSU)」の職員として働いている羽染貴秀氏。

今のお仕事の内容や、eスポーツ界で羽染さんが目指しているものについて語っていただきました。

プレイヤーとして実績を残していればおのずと界隈で拾ってくれる人がいる


――羽染さんは2012年に『FIFAインタラクティブ・ワールドカップ』日本代表として出場され、その後JeSUの前身である日本eスポーツ協会(JeSPA)に入り現在はJeSUで活動されています。最初はどのような経緯でJeSPAに入られたのでしょうか?

羽染貴秀(以下、羽染) 実は新卒のときに、当時JeSPAの事務局長だった筧誠一郎(※1)さんにお招きいただいたんです。

※1:筧誠一郎(かけひせいいちろう)。元 日本eスポーツ協会(JeSPA)事務局長。現在はeスポーツコミュニケーションズの代表や東京都eスポーツ連合会長を務めている。著書に「eスポーツ地方創生」(白夜書房)など。

――就職活動でゲーム系の会社を受けていたということでしょうか?

羽染 いえ、実は就職活動はまともにしていないんです(笑)。

1回だけ、英語の勉強をするために米軍基地で働こうと思って就職説明会に行ったんですけど、それ以外は何もせずに旅にでも行くかと思っていたら、なぜか誘われて。フラフラと行って、そのまま就職することになって今に至ります(笑)。

セカンドキャリアと言うのもなんですが、ちゃんとプレイヤーとして実績を残していればおのずと界隈で拾ってくれる人がいるんですよね。

――ゲーマーとして生きようとは考えなかったのでしょうか?

羽染 個人としては当時はあと15年くらいは選手を出来ると思っていました。その気持ちは今も変わっていません。ただ、僕が世界大会に出ていた2012年の頃って、「DetonatioN Gaming」さんや「SCARZ」さんが活動を始めたばかりという時期で、プロゲーマーとして活動するという空気がそんなに無かったんですよ。

ウメハラ(※2)選手が2010年に日本初のプロゲーマーになりましたけど、あのくらい突き抜けた人がたどり着く別世界のものだと思ってました。僕のような “ゲームが好きで上手な兄ちゃん” くらいのポジの人間が急にプロと言われても、「いや~、ちょっと……」みたいな(笑)。

※2:格闘ゲーム黎明期から現在に至るまで国際的な活躍を続けている格闘プロゲーマー。

――仮に、当時の羽染さんにプロの話が来ていたとしたら?

羽染 多分断っていると思いますね。僕はまだ未熟な人間なんですが、プロであるなら「子供たちのあこがれの存在」であってほしいと思うんです。人前に立って恥ずかしくない人間になるということは、僕の中では滅茶苦茶ハードルが高いんですよ。

そこに至っていないのに、子供たちから「あのプロゲーマーと戦いたい」とか「会いたい」とか思われながらファンサービスをやりつつ、強さを維持しなきゃいけない。これは当時も今でも、僕には無理だなと思っています。白い小切手に「好きな金額書いていいよ」と言われたらなびいてるかもしれませんけど(笑)。

――それは大抵の人はなびくでしょうね(笑)。ところで、今活躍されているプロゲーマーの中で羽染さんが理想としているのはどの選手でしょうか?

羽染 ときど(※3)選手です。ときど選手はプロゲーマーになりたての、自転車に乗ってTシャツを売っていた頃からフィジカル面のトレーニングを取り入れて自分を高めていました。ファンサービスもきちんとしていますし、ゲームのために心技体を整えているところがすばらしいですね。

※3:『ストリートファイターⅤ』で活躍する世界最強ランクの格闘プロゲーマー。著書に『東大卒プロゲーマー』(PHP新書)。


――羽染さんがゲーマーとして活躍していた時代と比べると、今は遥かにプロゲーマーになりやすくなっている印象です。

羽染 なりやすいですが、その分人の入れ替わりも多いかもしれません。選手がチームと契約する期間も半年や1年くらいが多いからかファンの定着率もまだ低く、特定のチームを応援するという感じが希薄です。そこがもう少し整備されて、たとえばチーム間移籍で移籍金が動くような、サッカーに近い形になるといいなと思います。


――プロゲーマーの数はどんどん増えていますが、JeSUのライセンス所持者は今、何人くらいいるのでしょうか?

羽染 今は大体140人くらいですね。内訳としては『ストリートファイターV』、『ぷよぷよeスポーツ』、『モンスターストライク』が多くなっています。

『モンスターストライク』は大会優勝チームにライセンスを出しているんですが、1チーム4名なので結果的に数が多くなります。『ぷよぷよeスポーツ』は隔月間でライセンス発行大会を開催しています。『ストリートファイターV』は昔から活躍されている方が多いですね。

――ライセンスの発行基準は決まっているのでしょうか?

羽染 基本的にライセンス発行大会で優秀な成績を残した方に発行しています。また今まで活動してきた実績、海外の大きな大会での実績などに対してメーカー推薦によりライセンスを発行することもあります。

プロライセンスを取得することで、メーカー主催の賞金付大会での賞金を獲得できるだけでなく、プロゲーマーのステータスや身元をしっかり保証できるものとしてライセンスが機能する方向に持っていきたいと思っています。

JeSUのライセンスがあると「プロ」というキーワードを気兼ねなく使えるので、ステータスとしてはすごく有効なんじゃないかと思っています。


――今後のライセンスに関しては更新の導入など、何かしらの展望はあるのでしょうか?

羽染 ライセンス保持者を対象にeラーニングの形で社会人としてのルールやスポーツマンシップについての講習を用意しようと準備を進めています。「情報漏えいはダメだよ」「チートは使ってはいけませんよ」といった当たり前のところから改めて周知していきたいと考えています。

JeSUとして活動した1年
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早川 清一朗

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元アニメライター現ゲーム&シナリオライター。  三度の飯より酒が好き。酒と同じくらい面白いことが大好き。  日々新たな面白さを求めてあっちへふらふらこっちへふらふらしています。

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