ゲーマーの曲がった体を救う? てぃーの選手と行く日本eスポーツトレーナー協会(JeSTA) 突撃取材【前編】

どこで見ても不健康そうな顔をしているゲーマーの健康と、パフォーマンス向上を目的とした企画「eスポーツ×健康」。

いきなり大風呂敷を広げると、今回の記事は高みを目指すゲーマーにとって下手な新書よりも為になる内容に仕上がったと自負している。

伺ったのは、日本eスポーツトレーナー協会。通称、JeSTA。

鍼灸やあん摩マッサージ指圧師、歯科医などの国家資格取得者を中心としたプロスポーツトレーナー集団で、その専門的なスキルでeスポーツ界の心と体を支えていくことを目的としている。

鍼やマッサージ……これは実際に体験すべきと同行をお願いしたのが、eスポーツ選手の舘野弘樹選手(通称 てぃーの選手)。

試合時には片足を立てた状態でゲーミングチェアに座る独特のスタイルが特徴だが、それ以上に有名なのが「腹」。

「通勤経路の駅のトイレはすべて制覇した」「病院であらゆる検査をしたのに原因不明」といった逸話をもつ、重度の腹痛もちなのだ。

てぃーの選手の同行を快諾してくださったJeSTAの面々は、取材の域を出ているガチの施術を行なってくれた。

結果として、より深くゲーマーの体を理解できる取材となり、てぃーの選手が丸裸となるドキュメンタリーにもなった。

てぃーの選手の「片足上げスタイル」を大真面目に解剖

まずはJeSTAの代表理事を務める、「そといけ治療院」の外池哲郎院長にお話を伺いつつ、てぃーの選手の体の状態をチェックしていただいた。

――マッサージなどの施術により、ゲーマーのパフォーマンスは向上するのでしょうか。

外池 長時間にわたってゲームをプレイすることによって筋活動と血液循環が低下するので、マッサージによって筋肉内組織の老廃物の流れを良くし、新陳代謝を盛んにします。また、刺激を与えることで体の機能調整を図ります。

体だけでなく、マッサージは精神的な疲労に対しても効果が期待できます。極度の緊張状態でプレイにすることによってぐったりとした不快感を伴う疲れが表れますが、マッサージによって筋肉の緊張が緩むことによりリラックス効果が望めます。

とくにeスポーツ選手のような方々は、マッサージによって肉体的、精神的にリフレッシュすることでより高いパフォーマンスを発揮することが期待できると思います。

 

――では早速、てぃーの選手のプレイ時の姿勢からチェックしていただけますか。

外池 比較的、背筋が張って体の軸がしっかりしてると思います。一般的にゲーマーがとってしまう姿勢より、腰が痛くなりにくいはずです。しかし、左右対称ではないので骨盤が歪んでしまう可能性があるので注意してください。

てぃーの たしかに、腰痛はあまり気にならないですね。

外池 その姿勢でゲームをプレイされ続けてどれくらいですか?

てぃーの 合計で6、7年くらいでしょうか。すべてのゲームでこの姿勢を取るわけではないのですが。

外池 どういった理由でこの姿勢に行き着いたのでしょう。

てぃーの 自分のプレイしているゲームでは左手でスティックの精密な操作が求められるのですが、コントローラーを浮かしているとわずかにブレてしまうんです。操作がブレないように手を固定したいと模索しているなかで、立てている左足とお腹で手を挟み込む現在のかたちに行き着きました。

外池 ゲームをプレイしていて比較的に​疲れやすいのは​、手首の外側(伸筋側・小指側)です。​これはコントローラーを持つ際に、伸筋側・小指側の筋肉が強く作動しているからです。てぃーの選手は無意識のうちに操作のブレを避けるだけでなく、肘を固定することでその延長にある手首も固定し、腕の疲労を回避しようとしているのだと思います。

外池 また、片膝をつくことにより​左​肩が内巻いている状態になっていますね。​巻き肩になることによって、肩甲骨が​上方へ引っ張られ、​鎖骨が落ちてしまいます。鎖骨が落ちると、首や肩の痛み、肩こり、腕の痺れなどにつながる恐れがあります。

外池 ゲームを長く続けていくうえでも、姿勢はとても大切です。通常、背骨は首で前湾し、胸で後湾、腰でまた前湾するS字型になっています。しかし「ゲーマーがよくとっている姿勢」では、C字となっています。

※てぃーの選手も普段ゲームをするときはこのC字型の姿勢になるという。

外池 頭の重さは5、6キロあるので、体が前傾していくごとに首へかかる負担は増していきます。パソコンで仕事をされている方も似た姿勢になるので、首の痛みを感じている方は多いのではないでしょうか。

こうした姿勢では、どうしても集中力が続きません。集中力の低下によって選手寿命が縮まっているのでは、と私は考えています。

以前に40代の格ゲーをされている方に伺った話ですが、「20代後半から30代にかけて、今までずっと何時間でもできていたゲームに疲労を感じるようになった。後々になって振り返ってみると疲労は腰痛などの痛みで、集中力の続く時間がどんどん短くなってパフォーマンスも落ちた。そうなると、自然とゲームから遠のいてしまった」とお聞きしたことがあります。

とくにその方は世代的にもゲーセンに足繁く通っていた方なので、背もたれのない席で前のめりになってアーケードゲームをプレイされていたのだと思います。首や腰への負担は相当なものだったでしょう。

てぃーの 実際に自分も7、8時間と続けて練習をすることもあるんですが、首や肩周りの痛みで座っていられなくなります。時間を追うごとに、明らかにパフォーマンスは落ちていきますね。プレイしているときは、集中力が切れているとは考えないんですが。

外池 おそらく、10代のころはもっと時間を忘れてプレイできていたはずです。

てぃーの そうですね。昔はそういったことに悩んだ記憶はないです。

外池 実際に30代半ば・後半でも第一線で戦われているeスポーツ選手はいますが、誰でもできることではありません。プロスポーツ選手と同じで、体のケアをしっかりとしている方が成し得ることです。5、10年後を見据えて、今からケアを始めることが大切ですよ。

 

――姿勢についてですが、椅子に深く腰掛け、体を預けるような状態をとるべきなのでしょうか。

外池 プロ選手のパフォーマンス向上という視点でいえば、必ずしもそうではないと思います。てぃーの選手のように、自分がもっとも良いパフォーマンスを発揮できる姿勢というのがあると思うので。

姿勢を保つという意味では、椅子の腰の部分にパットが入っていると人体の構造からして猫背にならないので、そういった椅子を選ぶとよい思います。

また椅子だけでなく見つめる画面の位置も重要で、目線と同じか少し見下ろすくらいのほうが首周りへの負担は減らせますよ。

 

――ここで、てぃーのさんからも直接お悩みを相談していただきたいと思います。

てぃーの ゲームをしているとどうしても体が痛くなってくるので、自分ひとりでも簡単にできるケアがあれば教えていただけないでしょうか。

外池 ストレッチポールがおすすめです。プロの方であれば、なおのこと使ったほうがいいですね。私も仕事柄、前かがみの状態で一日中過ごすために体がバキバキになってしまうので、帰宅した後は必ずストレッチポールを使っています。ぜひてぃーの選手にも試してもらいたいです。

てぃーの やばい、これ痛いです。

外池 痛いということは、筋肉が緊張して固くなってしまっている証拠です。そのまま体の力を抜いて、20秒ほど乗っているだけでもいいですよ。

今日はせっかくですから、簡単に体を動かしてみましょう。片方の膝を立てて、片方を少し伸ばす。顔は真正面にしてください。

てぃーの 長時間の練習のときは必ず仰向けになって休むんですが、ストレッチポールを使ったほうが全然いいですね。

外池 肩甲骨を動かすのでしたら、手を回すような感じで動かし、それを少しずつ上へ持っていきます。

※この姿勢のまま、平泳ぎのように腕を回している。

てぃーの あーなるほど。ごりごりするのがわかります。

外池 ほかにも肩甲骨を動かすのであれば、前ならえの格好で腕を突き出して、すとんと落とす。これらの動作で首周りがだいぶ軽くなるはずですよ。

てぃーの この動きはすごいですね。自分は肩甲骨付近の疲労を一番感じているので、すごい伸びを実感できます。

外池 筋肉が緩んでくると自然と肩甲骨のあたりが広がって、姿勢がよくなっていきますよ。ストレッチポールがないときに肩甲骨まわりを動かしたいときは、腕を上げて小指から外側へ広げる。肩甲骨が絞って離れて、という動きをします。

 てぃーの選手の「腹」の原因が明らかに?

――てぃーの選手のファンのあいだでは周知となっている「腹」についても伺ってみましょう。

てぃーの 十年以上の付き合いなんですが、毎日ずっとお腹を下している状態でして。病院で一通りの検査を受けてはいるんですが、全く改善されないんです。

外池 精神的なものではないのですか。 

てぃーの そうですね。そう言われてはいます。

外池 では、少し施術をしてみましょう。まず立っていただくと、てぃーの選手の姿勢の悪さがよくわかります。肩甲骨と腰も左に曲がってますね。

てぃーの 自分だとぜんぜんわからないです。

※筆者と外池先生の手は背骨から手を離すことなく、そのまま腰の方へなぞっている。筆者らの手が左に位置しているのがおわかりいただけるだろうか。

外池 曲がっているところが胃腸と関係している場所です。胃腸が悪いから曲がっているのか、曲がっているから胃腸が悪いのかはわかりませんが、実際にお腹の不調は体に表れていますね。

 

――てぃーの選手のプレイ時の姿勢が骨に表れているということですか。

外池 出ていると思います。 

 

この後、撮影NGで外池先生が実際に行っている手技をてぃーの選手に体験していただいた!

 

外池 これで背骨がだいぶ真っ直ぐになったと思います。 

【Before】

【After】

外池 てぃーの選手は腹筋がないね(笑)。もともとの重心が少し前に出ていますし、首も前に出ています。

てぃーの 全体的に筋肉がない自覚があります(笑)。

※「絆鍼灸マッサージ治療院」代表の川端先生と並ぶと、てぃーの選手の姿勢の悪さがよくわかる。

川端 普段から手を前で組みたくなりませんか? 体がそういうふうに固まっています。

てぃーの 確かに! 自分はよく無意識で手を前に組んでいます。

※ここまでの写真を振り返ると、てぃーの選手が自然と手を前で組んでいるのがわかる。

外池 この筋肉量の少なさは肉体改造が必要ですね。

※てぃーの選手と取材陣でしばらく体幹トレーニングをすることに。てぃーの選手だけ「(体力的に)帰れない」とスライムなみにぷるぷるしていた。

――てぃーの選手も幼少期からゲームをされていたそうですが、小さいころから悪い姿勢でいるとその悪い姿勢のまま骨格が成長してしまう……ということも起こり得るのでしょうか。

外池 十分に考えられます。とくに筋肉は悪い姿勢のまま慣れてしまうと、強くなっていく部分が変わってくると思います。

 

――てぃーの選手の筋肉量をたびたびご指摘されていましたが、やはりトレーニングは重要ですか。

外池 eスポーツにおけるパフォーマンスという意味では、直接的な影響を及ぼすかはわかりません。しかし、​運動不足などから体に変調をきたすことによって、間接的にはパフォーマンスに影響を及ぼすと思います。

我々は以前「eSports Conference」というイベントで、湘南ベルマーレのeスポーツ選手たちが受けるトライアウトに立ち合ったのですが、選手たちは実際の湘南ベルマーレの選手と同じ体幹トレーニングを行なっていると聞きます。長い人生を考えれば、ケアをしなければ体に変調をきたすでしょうし、とくに若年層にこそトレーニングは欠かせないと思います。

 

――eスポーツもまだ始まったばかりなので表に出ていないだけで、体のケアを怠るプレイヤーは10、20年後に何らかの異変を抱えている可能性が高いということですね。

外池 WHOでも「依存症」というかたちで警鐘をならしていますが、依存症にかかっている方たちも身体的な異変を抱えているかもしれません。JeSTAの活動でも、若年層へ体のケアの重要性はしっかりと伝えていきたいと思っています。

 

 

大ボリュームとなってしまったため、今回はここまで。

後編は歯科や鍼といった分野からゲーマーの健康を解き明かしていく。てぃーの選手の顔面に鍼が刺さる衝撃映像も!

 

日本eスポーツトレーナー協会

HP:http://esportstrainer.jp/
Facebook:JeSTA.eSports
Twitter:@e_jesta
Instagram:jesta.esports

砂拭

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シブゲーの某編集者との癒着によりeスポーツ業界へ潜り込んだ自称ライター。スポーツ紙よりはパワプロに詳しく、ゲームメディアよりは野球に詳しい独自のポジションでeBASEBALLライターの覇権を狙う。

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