eスポーツ業界に必要な「若い世代のために」という理念 てぃーの選手と行く日本eスポーツトレーナー協会(JeSTA) 突撃取材【後編】

プロゲーマーのパフォーマンス向上から、デスクワーカーの日常生活にまで役立つオリジナル企画「eスポーツ×健康」。

前回に引き続き、舘野弘樹(てぃーの)選手とともに伺った日本eスポーツトレーナー協会(JeSTA)への取材の模様をお送りする。

今回もパフォーマンスに直結する歯並びの問題や、てぃーの選手の鍼体験など、普段なかなか知ることのできない内容をポップにしつつ盛り込んだ。

JeSTAの先生方は、どうして惜しみもなく取材の域を超えた施術を行なってくれたのか。

それは、医療に従事する後進たちの育成や業界の発展、eスポーツ選手の将来を考え、未来を見据えた活動をしているからだ。

本記事が掲載される「SHIBUYA GAME」が閉鎖を発表したように、eスポーツ業界はまだ黎明期にあり安定期しているとは言い難い。興味本位で刹那的に参入する企業も少なくない。

JeSTAの根底にある「若い世代のために」という理念は、今後のeスポーツ業界になくてはならない姿勢といえるだろう。

eスポーツに歯医者さん? パフォーマンスに直結する「歯並び」

――JeSTAには歯科医師である小城哲治先生(ヒロ歯科院長)が所属されています。率直に、歯科とeスポーツの関連は想像しにくいのですが。

小城 私はほかの先生方のように会場で施術をするということはなく、試合以外の時間でパフォーマンス向上に結びつくサポートを行なっていきます。まずお話したいのが、歯並びについてです。

各分野の一流スポーツ選手を見てるみると、歯並びのよい選手がほとんどです。実は噛み合わせが良いことで、身体的に様々な影響があるのです。

・歯をぐっと噛みしめることで筋力は4~6%ほど上がる

・咀嚼筋という場所に力が入ることで、首が安定して姿勢の安定感が増す

・前頭前野の血流がよくなることで、集中力と判断力が上がる

・咀嚼が目の血流を促し、目の機能が活性するといわれる

逆に噛み合わせが悪いと、ものを噛むときに使う筋肉に偏りが生じ、頭痛や肩こり、自律神経の乱れなどにつながります。

どうして歯並びの話をするかというと、ゲームをしているときの姿勢が歯並びを悪くする恐れがあるからです。

――先ほど姿勢の悪さから起こる弊害をご説明いただきましたが(前編参照)、歯並びにも影響があるのですか。

小城 コントローラーを持つために手と肩が前に出て、猫背になります。いわゆる猫背で巻き肩、ストレートネックと呼ばれる状態です。

この状態では肩甲骨や胸骨が下がり、これらの骨にくっついている筋肉も一緒に下ります。この筋肉は首や口周りの筋肉にもつながっていて、下顎と舌をひっぱります。すると自然と口が開いてしまい、口呼吸になりやすい。

ここからは専門的な話となるのでかいつまんでお話しますが、口呼吸が続くと舌の位置が下顎にくっついた状態になります。

本来、舌は口のなかの天井部分(口蓋)に持ち上がっているのが理想的な状態であり、舌の支えがなくなると上顎の歯の並びはU字からV字となります。

それに合わせて下顎の歯並びも悪くなり、結果的に上下の歯並びが悪くなるというわけです。

姿勢の話と同じで、小さい頃からゲーム中の猫背の姿勢をずっと続けていると歯並びに影響を与えると考えられます。

――しかし、歯の矯正には長い時間とそれなりの費用がかかると聞きます。手軽に指導や治療はできないのではないでしょうか。

小城 eスポーツ選手の噛み合わせ改善のために提案したいのが、装着感の少ないタイプのスポーツマウスピースです。

型取りの道具を用意してきたので、今回は奥歯だけに装着できる局所タイプをてぃーの選手にご体験いただきたいと思います。

小城 実際にマウスピースを作るときは、型を3つほど取って一番しっくりくるものをもとに作成します。

――すると、比較的時間もかかるのでしょうか。

小城 いえ、型をとるだけなら15分くらいですね。

てぃーの 意外と口の中で邪魔にならないです。ぐっと力をいれても大丈夫という安心感がありました。

外池 私もマウスピースを装着しますが、体幹がバシッと決まりますよ。

小城 試合中よりも、疲労が溜まる長時間の練習中などで使っていただくと体の力が抜けて練習効率が上がると思います。本番ではナチュラルな状態で臨むほうが良いと思いますので、トレーニング期間に用いるアイテムですね。

外池 局所タイプはビジュアル的にも目立ちません。

ご覧のように、マウスピースを装着しているかは外見からではわからない。唐突に「チッチキチー」をしているわけではない。
マウスピースの作成前に柔軟性を確認し、マウスピース装着後に同様の動きを繰り返したところ、装着後のほうが柔軟性が増していた。
親指を立て、その親指を見つつ行けるところまで体を旋回させる動作。てぃーの選手はこの動作の柔軟性が高かった。繰り返すが、「チッチキチー」をしているわけではない。

てぃーの選手の顔面に鍼が……

――今日は鍼もご用意していただいたそうで。てぃーの選手も是非ということでしたので、小野垣光郎先生(こるかた治療院院長)に施術を行なっていただきたいと思います。

小野垣 てぃーの選手は鍼の経験がないということなので、一番細いもので始めてみましょうか。

てぃーの 感覚としては、点滴を受けるようなものですか。

小野垣 いえ、全く痛みはないです。この鍼は注射針のなかに4、5本入るくらいの細さなので。

てぃーの え、もう入ってるんですか。なにかが触れているという感覚があるくらいです。

小野垣 先ほど腹痛のお話があったので、胃経と大腸経に刺してみましょう。

てぃーの あ、刺した瞬間にぐうっとくる痛みがありました。

――痛みがあるとその部位が悪いということなのですか。

小野垣 「鍼の響き」というのですが、神経の反射ですね。

川端 ツボ的な観点から言いますと、今てぃーの選手は胃や大腸につながっているツボに鍼を受けていただいています。試合や練習などで筋肉が張っている部分や疲れている部分を直接狙って刺すこともでき、疲れが溜まっていると、先ほどてぃーの選手が感じた鍼独特の「響き」を感じやすいわけです。

小野垣 では実際に疲労に対しての効果も狙っていきましょう。利き目は左でしたよね。

小野垣 「経絡」というものがあるのですが、そこに合わせて打っていきます。

てぃーの いま自分がどうなってるかわからないですが、顔は少しピリピリする感じがありますね。

――さらに鍼が増え、ちょっとショッキングな映像なので写真は控えます。顔にかなり鍼が刺さってます。

川端 鍼は本人に刺さっている感覚がなくても、筋肉は刺激を感じていて固くなっている部分を緩めてくれます。また刺激によって血流がよくなり、溜まっている疲労物質などを流し、代謝を良くするという効果もあります。

小野垣 eスポーツの大会は照明を落としている場合が多いので鍼は打てないこともあると思いますが、鍼は即効性があるので試合の合間などにもおすすめです。

 

筆者も一本だけ鍼を刺していただき「響き」というものを体験したが、刺すような痛みではなく、筋肉にずんっと響くような感覚があった。
日常のなかで体感するものとしては、予防接種などで注射を二の腕に刺すときの感覚が一番近しいだろうか(もちろん、あれほどの痛みはない)。

JeSTAは「若い世代」のために活動する

――お話できる範囲で、てぃーの選手の「腹」についての見解をお聞かせ願えますか。

小野垣 簡単に言うと、神経伝達の流れが悪さが影響しているのではないでしょうか。トレーニングをして体幹部分の筋肉を鍛えていけば、改善するのではないかと思います。また、筋肉量が少ないために基礎代謝が低いと思います。体幹の部分をケアしていけば、身体的なパフォーマンスも上がっていくのではないでしょうか。

小城 てぃーの選手の交感神経は仕事と帰宅してからのゲームによって常に活発な状態にあり、緊張が続いている状態にあると思います。胃腸を動かすのは副交感神経ですから、多少なりとも影響はあるのではないでしょうか。神経系をリラックスさせるのが大切だと思いますね。

――今日は至れり尽くせりでてぃーの選手に施術を行なっていただきましたが、個人でケアを依頼するとしたらどの程度の費用が必要でしょうか。

外池 各治療院の設定している金額になりますね。そといけ治療院では通常施術が5,400円、プレミアム(頭部フェイスも含む)が7,020円です。eスポーツ選手にはプレミアムをお薦めします。

――大事な試合の前に一度ケアをしてもらうという利用でもよいのでしょうか。

外池 それでもいいと思います。まず、自分の体がどういう状態なのかを知ってもらいたいですね。5年後、10年後の体を作るのは今なので。

――JeSTAでは6月30日に講習会を開かれたとのことですが、改めて今後の展望などをお話いただけますか?

外池 講習会では医療従事者や医療系の学生さんに向け、協会創設の目的やビジョン、今後の展開といったことをお伝えしました。

これからeスポーツのイベントはオフライン・オンラインともにますます活発になり、全国で活躍の場が増えていくと思います。また、学校の部活動やプロ選手個人へのトレーナー派遣というのも将来的には活発になるのではないかなと考えています。

そうしたeスポーツ界において、国家資格をもつ若い世代が活躍できる環境を整えてあげたいという思いが我々にはあります。

私は治療院の運営などもあり、現場に足を運ぶ機会も限られます。そこで私たちの経験を現場で活躍できる人に伝え、全国各地で開かれるeスポーツのイベントにも対応できるよう同志を募っています。

ありがたいことに講習会の予約もすぐに満員となりましたが、今はまだ「健康」に目を向けている選手やチームも少ないと思いますし、JeSTAの認知度も低いです。

本格的にJeSTAが必要とされるのはまだ少し先だと思いますので、それまでに体制と環境をしっかりと整えていきたいと考えています。

 

――ありがとうございました!

日本eスポーツトレーナー協会

HP:http://esportstrainer.jp/
Facebook:JeSTA.eSports
Twitter:@e_jesta
Instagram:jesta.esports

砂拭

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シブゲーの某編集者との癒着によりeスポーツ業界へ潜り込んだ自称ライター。スポーツ紙よりはパワプロに詳しく、ゲームメディアよりは野球に詳しい独自のポジションでeBASEBALLライターの覇権を狙う。

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