eスポーツバブルを乗り越えるには? 香港のeスポーツカンファレンス「DELF」レポート

2019年7月16日(火)、香港にて「デジタル・エンターテイメント・リーダーシップ・フォーラム」(以下、DELF)が開催されました。DELFはeスポーツに関するビジネスカンファレンスで、香港の企業はもちろん、日本・東南アジア・ヨーロッパなど世界中からパネリストが集い、様々な角度からグローバルのeスポーツ市場の分析や解説が行われました。

香港のeスポーツ事情や、グローバルのeスポーツ市場の行方、本記事では、DELFで行われたプレゼンの中でも、特に注目したい話題をピックアップして紹介したいと思います。

情熱か、金か

日本と同様、世界的にもeスポーツへの認知度は高まりつつあります。若年層にリーチできる場としてeスポーツを活用したいと考えている企業は多く、今後も投資を行う企業は増えるだろうと言われています。

ただ、より多くの人々がeスポーツに参入することに対して慎重な向きもあるようです。香港eスポーツ連盟会長のDerek Cheung氏は「昔はeスポーツ業界はお金がありませんでしたが、情熱だけはありました。今はお金こそ増えたものの、情熱を持っていない “業界人” の割合も増えてしましました」と危機感を露わにしました。

Derek Cheung氏(右)

「香港eスポーツ連盟の役目のひとつは、『お金はあるけど情熱がない人』と『情熱はあるけどお金はない人』の溝を埋めることだと考えています。例えばゲームのことを知らない投資家には、ゲームの魅力を伝える。稼ぎの少ないプロゲーマーには、自立するためのお金の知識を提供する。連盟は双方の理解を進めるためのプラットフォームを目指しています」

マレーシアやタイ、イスラエルなどでも、「情熱を持たない人たちとの対話」はeスポーツを浸透させる上で大きな課題とのことです。これらの国々では政府がゲームを産業として捉えておらず、政府担当者を “教育” することに多大な労力を割いたそうです。

ロゴだけ掲載して「投資した」と言う時代は終わった

また、DELF全体を通して印象的だったのが、世界各国のパネリストが「eスポーツ市場はまだ投資フェーズにある」という課題を共有していることでした。

eスポーツの興行化が進んでいる印象のあるヨーロッパ圏でもeスポーツ市場は投資フェーズから抜けきれておらず、バブルとも言える状態にあるそうです。

ドイツeスポーツ連盟の会長であるHans Jagnow氏は「投資のみに頼らない市場を目指すためには、eスポーツ市場自体が価値を提供しつづけることも大切ですが、現在eスポーツに投資してくれている会社・ブランドの協力も不可欠です」と述べました。

Hans Jagnow氏(左)

「投資にも様々な形がありますが、ユニフォームに会社のロゴを載せただけで『投資した』と言う時代は終わったのです。投資するのであれば、eスポーツに可能性を感じ、情熱を持ってコミットしないと共に成長することはできません」

また、同じくドイツのeスポーツ大会運営会社ESLのBernhard Mogk氏はプーマとCloud 9のスポンサー契約を例に挙げ、「製品開発の経験が豊富なブランドがチームグッズのプロデュースを行うことで、チームとファンの繋がりがより強固になります。また、質の高いグッズはチームの収益にも良い影響を与えます」と説明しました。

Bernhard Mogk氏

「若者はお金を持っていない」は幻想?

“収益” という言葉を聞くと、投資家を含めeスポーツ業界に関わる多くの人は「そもそもeスポーツ業界はどこでお金を稼ぐのか?」という疑問を抱くのではないでしょうか。その疑問の答えは、パネリストによって多種多様でした。

イスラエルeスポーツ連合の会長Ido Brosh氏は「現在、eスポーツで最も儲かっているのはゲームデベロッパーかもしれません。しかし伝統的なスポーツを見てみると、ボールを作っているメーカーだけでなく、グッズやユニフォームを売っているチームも収益を上げています。スタジアムを運営する会社も同じです」と、eスポーツチームや施設を運営する会社にも収益化の可能性があることを示唆しました。

Ido Brosh氏(右端)

ただ、他国のパネリストからは「eスポーツに関心を持っている層が10~20代中心であることを考えると、eスポーツに対してお金を払いたくても払えない人が多いのでは」との発言も。

収益化問題に関してデベロッパーへの強いメッセージを発したのは、香港eスポーツ連盟会長のDerek Cheung氏でした。

「若者がお金を持っていないからeスポーツ業界にお金が入ってこない、という認識は間違っていると思います。現に、若者をターゲットにした『フォートナイト』や『‎League of Legends』などは莫大な利益を上げています。問題なのは若者の懐事情ではなく、デベロッパーからeスポーツ業界へのお金の流れが悪いことです」

Derek氏は、その問題の原因が “対話不足” にあると指摘。eスポーツ業界に求められているのは「価値を提供し続けること」であるという前提で、eスポーツを取り巻く他業界の協力無くして成長は難しいとまとめました。

DELFとは何なのか?

DELF会場となったショッピングモール「Arcade」

補足情報ですが、本イベントが開催されたのは、香港島の西部に位置する「サイバーポート」というビジネスパークです。サイバーポートはIT技術の開発・発展を目的に香港政府と財閥企業が共同で設立した施設郡で、複数のオフィスビルや住宅街、ショッピングモールなどが立ち並んでいます。

サイバーポートにはソフトウェアやデジタルサービス関連のスタートアップ企業が集っていますが、サイバーポートとしては「デジタルエンターテインメント」「IoT」「フィンテック」の3つの分野に注力しているとのこと。

そして、デジタルエンターテインメント分野にて可能性を秘めている “eスポーツ” を前面に押し出すべく、DELFが開催されました。

サイバーポートは20社近くのeスポーツ関連スタートアップ企業を抱えており、DELFはそうした企業のショーケースという一面もあります。

DELFは、サイバーポート敷地内のモールに常設される「eスポーツスタジアム」のこけら落としも兼ねており、サイバーポートでは今後もカンファレンスやeスポーツ大会・イベントなどを行っていく予定だそうです。

シブゲー編集部

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シブヤの片隅からゲームのことを。シブヤの片隅から、ニュースやキーマンへのインタビュー、イベントレポートを中心に、ディープでエッジの効いたeスポーツ関連情報を発信します。

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